Research Highlights

有機半導体:核スピンの効果を解明する

Nature Nanotechnology 2014, 1014 doi: 10.1038/nnano.2014.241

凝縮系物理学では、熱励起による望ましくない効果を最小にするために、低温で実験が行われることが多い。しかし、調べている現象に実用化の可能性があれば、高温で何が起こるか調べるのも重要になる可能性がある。ユタ大学(米国)、クイーンズランド大学(オーストラリア)、レーゲンスブルク大学(ドイツ)のH Malissaたちは今回、有機発光ダイオード(OLED)における核スピン励起の効果を室温で調べている。こうした実験は、室温では核スピン励起が熱エネルギーの100万分の1であるため、特に難しい。

有機半導体の導電率に対する外部磁場の効果は、核スピンと電子スピンの超微細相互作用に起因するとこれまで考えられていた。Malissaたちは、2種類の実験でこの予測を確かめた。第一の実験では、電子スピンエコー・エンベロープ変調と呼ばれる手法を用いて、MEH–PPVポリマーでできたOLEDを調べ、マイクロ波によって電子スピンが励起された後の、電流の変化を測定した。特に、ポリマー中の水素核スピンに典型的な周波数で変調された信号が測定された。ポリマー中の水素を重水素に置き換えると、それに対応して変調周波数が変化したことから、電子スピンと核スピンの相互作用がこうした物質における電流に影響を及ぼしていることが例証された。

第二の実験によって、超微細相互作用の効果がより直接的に確認された。この実験では、電子核二重共鳴と呼ばれる手法が用いられた。この手法では、高周波パルスによる水素核スピンの励起後に、電流が測定される。今度も、電流の明確な変調が測定された。

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