Research Highlights

ナノ粒子:抗がん剤を運ぶナノゴースト

Nature Nanotechnology 2013, 813 doi: 10.1038/nnano.2013.165

抗がん剤のナノ粒子送達の2つ主な方法、受動的ターゲティングと能動的ターゲティングは、受動的ターゲティングでは腫瘍の構造の違いによって、能動的ターゲティングでは送達媒体に組み込まれる標的基の複雑さによって制限されている。テクニオン・イスラエル工科大学のM Machlufたちは今回、ナノゴースト、つまり間葉系幹細胞(MSC)の細胞膜でできたナノ粒子を用いて、腫瘍特異的な薬物送達を実証している。

無傷のMSC細胞膜(ゴースト細胞)は、肝毒性と短い半減期によって臨床使用が制約されている生物学的抗がん剤sTRAILを取り込むと同時に、ナノスケールの粒子に変形した。ヒトMSCあるいはラットMSCから得られ、薬物を内包したナノゴーストの単回投与によって、ヒト前立腺がんを持つマウスの腫瘍の成長が、最長2週間にわたって70%以上抑制されることがわかった。ヒト平滑筋細胞(SMC)から得られ、sTRAILを内包したナノゴーストには治療効果がなく、有効なナノゴーストは、種ではなく腫瘍に特異的であることが例証された。

ナノゴーストの取り込み機構はまだ完全には解明されていないが、SMCナノゴーストはMSCナノゴーストと同じ大きさと物理的特性を持っており、腫瘍に対する能動的ターゲティングと受動的ターゲティングの違いに関する知見が得られるとMachlufたちは力説している。

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