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皮膚にくっつく日焼け止め

Nature ダイジェスト Vol. 13 No. 8 | doi : 10.1038/ndigest.2016.160806a

血流に混入する心配のないナノ製剤

夏の強い日差しの下、日焼け止めを塗っておくとひどいやけどを防止できるが、こうしたスプレーやローションに共通して含まれる成分の中には皮膚に浸透して血流に入るものがある。これが何らかの危険を生じるかどうかは定かでないものの、エール大学(米国)の皮膚科医Michael Girardiは、代替成分を開発する価値はあると考えている。彼は同大学の生物工学科と共同で、化学物質を皮膚の表面にとどめておくように設計した日焼け止め剤を開発した。

日焼け止め剤で日光の危険な紫外線を吸収している成分は一般に有機分子だ(これに対し太陽光線を遮断するタイプの場合は金属酸化物)。これらの吸収分子が人体に直接害を及ぼすという証拠はない。だが、一部がホルモン受容体に結び付く場合があることを動物実験や培養細胞で示した研究が少数ながらある。この結果は、人体の内分泌系が乱される可能性を示唆している。つまり、生殖などの機能を調節するホルモンの流れが乱されるかもしれない。

ナノカプセルに封入

Girardiらは皮膚に浸透しない日焼け止めを開発すべく、「パディメートO」という一般的な紫外線吸収分子を、皮膚細胞のタンパク質に結合する生分解性ポリマーのナノカプセルに封入した。このナノ粒子は皮膚に水をかけても皮膚細胞にくっついたままで、タオルでぬぐうと取れる。この新しい製剤はパディメートOを用いた在来の日焼け止めと全く同じように、紫外線からマウスの皮膚を保護した。2015年9月にNature Materialsに報告。

米国立がん研究所の皮膚科学者Kenneth Kraemerは、この結果に感じ入っている。「日焼け止めが血流に入り込むリスクを最小限に抑えられるというのは、おそらく良いことです」と言う。だが、この製剤が商品化されてビーチバッグにお目見えするまでにはまだ時間がかかる。Girardiは今夏、約25人を対象にパイロット試験を実施し、このナノ日焼け止め剤のさまざまな濃度における日焼け止め指数(SPF)を測る予定だ。

ところで、日焼けやしわ、がんにつながる恐れのある紫外線ダメージを避けるという点で、当面はどんな日焼け止めでも何も付けないよりはましだ。この点もお忘れなく。

(翻訳:鐘田和彦)

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Nature ダイジェスト Online edition: ISSN 2424-0702 Print edition: ISSN 2189-7778

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