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最後まで生き残るのはオオトカゲ?

Nature ダイジェスト Vol. 11 No. 2 | doi : 10.1038/ndigest.2014.140204

原文:Nature (2013-12-11) | doi: 10.1038/nature.2013.14355 | Why lizards may inherit the Earth

Ewen Callaway

オオトカゲ類の呼吸様式は鳥類に近いことが、今回明らかになった。この爬虫類が太古から今日までさまざまな環境で生き延びることができた理由は、その呼吸様式にあるのかもしれない。

Credit: THINKSTOCK

鳥類の呼吸系は、息を吸うときも吐くときも肺の中を空気が一方向に通り抜け、空気中の酸素を血液中に取り込む仕組みになっている。この呼吸様式は主に鳥類特有のものであり、鳥類は飛翔に大量のエネルギーを必要とするためにこうした適応を遂げたと考えられてきた。ところが、爬虫類のサバンナオオトカゲ(Varanus exanthematicus)で鳥類と同様の「一方向性の呼吸様式」が見つかったことが2013年12月11日にNature電子版に掲載された1。その結果、この呼吸様式がいつ現れて、どのような理由で進化したのか、という疑問が新たに出てきた。

「鳥類のやや遠い親戚に当たるオオトカゲ類の肺で、鳥類に似た空気流パターンが見つかったことは衝撃的だ」と、ウェスタン健康科学大学(米国カリフォルニア州ポモーナ)の進化生物学者Mathew Wedelは話す。

哺乳類や他の多くの脊椎動物では、呼吸の際に、潮の干満のように空気が肺の中に満ちては出て行く。つまり、肺に吸い込まれた空気は肺胞と呼ばれる袋状の空洞に入り、そこでガス交換(酸素の取り込みと二酸化炭素の排出)が行われ、空気を吸い込んだときと同じ経路を戻って吐き出される。しかし鳥類の呼吸様式はそれと大きく異なっている。「気嚢」と呼ばれる袋状の特殊な器官が肺の前後にあり、それらを使って、息を吸うときも吐くときも多数の管からなる肺の中を空気が一方向に流れ、そこでガス交換が高効率で行われる。

2010年、ユタ大学(米国ソルトレークシティー)のColleen Farmerのチームは、アリゲーターなどのワニ類も一方向性の呼吸を行っていることを見つけた2。この発見により、恐竜も同様の方式で呼吸をしていた可能性が示唆された。ただしWedelは、「ワニ類の呼吸様式が鳥類のものに似ているとしても、さほど不思議ではありません」と話す。そもそもワニ類と鳥類は肺の構造が似ているのだ。

オオトカゲ類は約70種からなる分類群で、地球上で最大のトカゲ類であるコモドオオトカゲもここに含まれる。オオトカゲの肺は一見すると、哺乳類などと同様の呼吸様式をとっているように思えると、今回Farmerと共に研究を行ったEmma Schachnerは言う。「オオトカゲの肺は、鳥類の肺とは全然似ていないのです」。しかし、コンピューター断層撮影(CT)装置でスキャンすると、左右それぞれに1つの大きな房があり、その房の脇に11個もの袋状の気管支が付いていて、それらの気管支が小孔を通じて互いにつながっていることが明らかになった。こうした構造が、空気が一方向に流れることを可能にしているのではないかと考えられた。

この可能性を検証するため研究チームは、オオトカゲを解剖して肺を詳しく調べ、また、微小な球状粒子を混ぜた水で肺を満たして水の流れを追跡した。大きい房では水が潮の干満のように流れたが、脇の小さい袋状の気管支では一定方向にしか流れなかった。そこで研究チームは、5匹のオオトカゲの肺にセンサーを埋め込んで呼吸時の空気流を測定し、実際の空気流パターンも水の粒子流動パターンと同じになることを確認した。

一方向性の呼吸様式がオオトカゲで見つかったため、この形質は、鳥類、ワニ類およびトカゲ類の共通祖先(約2億7000万年前に生息していたイグアナに似た動物)で進化したか、あるいは、これら3群のそれぞれで独立に進化したかのどちらかだろうとSchachnerは話す。どちらのシナリオが正しいか見極めるため、Schachnerらは今後さらに、複数の他の爬虫類の呼吸パターンを調べる予定だ。

今回の研究成果から、一方向性の呼吸様式がそもそもなぜ進化したのかという疑問も生まれる。この呼吸様式は空気からより多くの酸素を取り込めることから、動物が息を止めているさなかの酸素の取り込みに役立っている、という仮説をFarmerは提案する。多くのトカゲ類では驚いたときに息を止める行動が見られるからだ。また、Schachnerは、ワニ類は20分間も息を止めていることができるため、太古の海生爬虫類もこの呼吸様式を使って長く潜水していた可能性があると話す。この呼吸様式は、地球史で起こった大気中酸素濃度の低下に対する適応の1つだったのかもしれない。2億5000万年前の中生代三畳紀前期には、大気中酸素濃度が12%まで低くなったからだ(現在の濃度は21%)。

「今回の成果によって、オオトカゲ類がこれほど繁栄している理由の一部が説明できそうです」とWedelは話す。オオトカゲ類は、乾燥した砂漠から熱帯林まで多様な環境に生息している。「今後小惑星が地球に衝突した場合、その後の地球を継ぐものはひょっとするとオオトカゲ類かもしれません」。

(翻訳:船田晶子、要約:編集部)

参考文献

  1. Schachner, E. R. et al. Nature http://dx.doi.org/10.1038/nature12871 (2013).
  2. Farmer, C. G. and Sanders, K. Science 327, 338-340 (2010).

キーワード

Nature ダイジェスト Online edition: ISSN 2424-0702 Print edition: ISSN 2189-7778

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