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羽音でハチの健康診断

Nature ダイジェスト Vol. 10 No. 7 | doi : 10.1038/ndigest.2013.130706b

巣箱に設置したセンサーで病気の兆候をつかめるかも

ミツバチの羽音は、人間の耳にはいつもブーンとしか聞こえない。だがある研究グループは、その音のわずかな変化を解読すれば世界中で進んでいるミツバチの激減を食い止められるかもしれないと考えている。

英国ノッティンガム・トレント大学を中心とする研究チームは、ハチの巣から聞こえる羽音の変化はハチの健康状態を反映しており、ハイテクを駆使してこれを聞き取れば、養蜂家に早期警報を出せると考えている。欧州連合(EU)から180万ドルの研究費を得て、フランス南東部地方の村にあるハチの巣箱20個の羽音を5年にわたって解析する実験が、今年の初春から始まった。

研究チームを率いるMartin Bencsikは、以前、加速度計というセンサーを使って、分封と呼ぶ現象の前に生じるハチの羽音の独特な変化を捉えた。分封とは、女王バチが多くの働きバチを引き連れて巣を出て行き、新しい巣を作る現象だ。一方、今回の研究の目標は、世界でハチの群れを衰弱させている謎の蜂群崩壊症候群(CCD)など、ハチの病気に関連付けられるような羽音の変化を特定することにある。

これには、振動パターンのわずかな変化を検知できる工業用のセンサーを使う。小さな加速度センサーをハチの巣の壁に埋め込み、ハチの活動や羽音によって引き起こされた巣の振動を測定する。ちなみにハチには耳がなく、脚で振動を感じ取ることで相互の情報交換を行っていると考えられている。

いずれにせよ、巣から得られたデータをコンピューターで解析し、羽音(音の高低やパルスの間隔など)とハチの健康状態の間に隠された相関を見つけ出すのが目標だ。最終的には、加速度センサーが気がかりな変化をとらえたら、自動的に無線で養蜂家に警報を発して素早く対処できるようにしたいとBencsikは考えている。

問題は、殺虫剤が関係しているとする研究があるものの、蜂群崩壊症候群の原因がいまだに特定できておらず、対処法を絞れないことだ。「対策はたくさん提案されていますが、有効であるという確証はどこにもないのです」と英国レディング大学で生物多様性と生態系サービスを研究しているSimon Pottsは言う。

ということは、将来、効果的な対策が可能になった時点で、Bencsikの診断ツールも完成していてほしい、というのが養蜂家の願いに違いない。

(翻訳:粟木瑞穂)

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Nature ダイジェスト Online edition: ISSN 2424-0702 Print edition: ISSN 2189-7778

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