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抗体薬が足りなくなる!?

Nature ダイジェスト Vol. 10 No. 2 | doi : 10.1038/ndigest.2013.130215a

 

免疫との関連性が判明し、精神疾患向けに需要が急増

強迫性障害からアルツハイマー病まで、さまざまな病気で免疫系が演じている役割が明らかになるにつれて、一度は忘れられた治療法が新たな注目を集め始めた。献血の血漿から作られる静注用免疫グロブリン(IVIG)にアルツハイマー病の進行を遅らせる効果があることが臨床試験で確認されたら、この薬が足りなくなると心配する声が上がっている。

IVIGには免疫グロブリンG(IgG)という抗体が含まれている。IVIGがどんなメカニズムで作用するのか完全にはわかっていないが、免疫グロブリンGは感染症を撃退し、免疫系を調節し、炎症を抑える働きをする。IVIGが1980年代初めに認可されたときは、原発性免疫不全症(PIDD)患者の抗体を交換するために処方され、その後、多発性硬化症など自己免疫疾患の免疫系を調節する目的で使われるようになった。現在では100を超す適応外使用(オフラベル処方)があり、これらが市場としても急拡大している。

アルツハイマー病の抑制にも?

その中でも新しいのが精神疾患の分野で、あるタイプの統合失調症や強迫性障害など、自己免疫が一因と考えられる疾患に使われ始めた。IVIGは現在、自己免疫性脳炎の患者に処方されることが多い。これは抗体が脳を攻撃するまれな疾患で、精神病や緊張病(カタトニー)などの症状を引き起こす。また、突発性強迫性障害の小児患者を対象にIVIGの効果を調べる臨床試験が2016年の終了予定で進んでいる。この病気は、連鎖球菌(Streptococcus)に対する抗体が血液脳関門を通過して脳に入ることで、発症するのではないかと考えられている。

また、IVIGによってアルツハイマー病の進行を遅らせる可能性も期待されている。コーネル大学医学部で行われた最近の研究は、IVIGが脳内に蓄積される異常なタンパク質を減らし、炎症が引き起こすダメージを抑える可能性を示唆している。IVIGのアルツハイマー病への適用はまだ後期臨床試験の段階だが、もし認可されたら需要が年率7~12%で急増するだろうと関係者は身構える。

「これは実に頭の痛い問題だ。IVIGは簡単に作れる錠剤とは訳が違い、供給量が限られているのだから」と、ベイラー医科大学の小児科学・病理学・免疫学教授のJordan Orangeは言う。医師たちはIVIGの処方について見直し、有効性があまりはっきりしない場合には代替法を探るよう、互いに呼びかけ合っている。

(翻訳:粟木瑞穂)

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Nature ダイジェスト Online edition: ISSN 2424-0702 Print edition: ISSN 2189-7778

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