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3D印刷で人工気管

Nature ダイジェスト Vol. 10 No. 10 | doi : 10.1038/ndigest.2013.131006a

再生用の埋め込み器具が実用化

2011年、Kaibaという名の生後6週間の男児の呼吸が、突然止まってしまった。真っ青になった両親はKaibaを抱えて病院に駆け込んだが、そこで、左の気管支が生まれつきつぶれていることが判明した。その後の数週間、発作は繰り返し続いたが、3D印刷で作られた管を2012年1月に移植し、それによって気道が開き、障害は治まった。

この管は、2~3年後には体内で溶けて吸収されてしまう。男児の気管支が成長して通常の呼吸ができるようになるまで、時間を稼いでくれるわけだ。組織の再構築を助けるこうしたインプラントが使われたのは、これが初めてである。詳細は、New England Journal of Medicine 2013年5月号に報告された。

痛みなしに支える“さや”

電気掃除機のホースの金属製リングのように、気管は軟骨のリングが20個つながってできており、肺へ分岐する気道を開いている。だがまれに、一部が軟らか過ぎてつぶれてしまうことがある。

そんな場合、気管内にステントを移植して気道を内側から押し開く方法があるが、痛みを生じて呼吸困難を起こすことがしばしばだ。Kaibaを診た医師たちは、ミシガン大学の医師Glenn Greenと連絡を取った。Greenらは、患者のつぶれた気管の周りに巻き付けて痛みなしに気道を開く特製の管を開発中だった。

Greenらは3Dプリンターで人工気管が作れると考えた。気管の構造を形作っているリングを、3Dプリンターなら簡単に作れるからだ。すでに生体適合性プラスチックを使って気管を3D印刷で作り、仔ブタで試していた。

Kaibaにこの手法を適用するに当たっては、まず気道をCTで撮影し、そのデータを使って気道の鋳型をプリントした。次にこの鋳型を使い、気道にフィットして安定化させる柔軟な“さや”を作った。最後に、Kaibaの気道組織を覆うように“さや”を巻き、外側から縫い付けた。この手術は米食品医薬品局(FDA)から緊急承認を得る必要があった。

「さやを取り付けたところで、Kaibaの肺が初めて動くのが見えました」とGreenは言う。3D印刷で医療用具や身体パーツを作って利用する試みは、まだ始まったばかりだ。しかしKaibaと同じように「その可能性は大きいと思います」とGreenは言う。

(翻訳:粟木瑞穂)

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Nature ダイジェスト Online edition: ISSN 2424-0702 Print edition: ISSN 2189-7778

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