【ゲノム編集】第3のCRISPR-Casシステムの開発
Nature Communications
2019年1月23日
ヒト細胞のゲノム編集に用いるCRISPR-Casシステムに関して、第3のCas酵素Cas12bを用いたシステムを紹介する論文が、今週掲載される。
CRISPR-Cas9は、ゲノム編集のための汎用性の高いシステムだが、Casファミリーのタンパク質においてRNA誘導型ヌクレアーゼ(DNAを切断する酵素)はCas9だけではない。Cas9の他にも、Cas12aとCas12bがすでに同定されている。Cas12aはゲノム編集用に開発されたが、Cas12bについてはそれほど徹底した開発が行われていない。その原因の1つは、Cas12bが高温を必要とする酵素であることだ。
今回Feng ZhangたちがCas12bを研究対象としたのは、Cas12bがCas9やCas12aよりも小さなタンパク質であり、ウイルスベクターを使った細胞内送達用のツールとして魅力的であるからだ。ただしCas12bは、元の構造のままだと、二本鎖DNAの標的以外のDNA鎖を切断することがある。この問題を克服するために、ZhangたちはCas12bを再設計して、体温(摂氏37度)での活性を高めた。再設計されたCas12bは、細胞培養実験において、必要とする標的配列に対する特異性がCas9よりも高かった。
このように改変されたCas12bがCas9のように広く利用されるツールとなるためには、さらなる研究が必要だが、ゲノム編集のためのCRISPR-Casシステムに第3のシステムが加われば、研究コミュニティーにとっての選択肢が増える。
doi:10.1038/s41467-018-08224-4
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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