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光起電力技術を利用したピクセル密度の高い人工網膜

Nature Photonics 6, 6 doi: 10.1038/nphoton.2012.104

網膜変性疾患は、「画像取得」を行う光受容体が失われるため失明につながるが、「画像処理」を行う網膜内層の神経細胞のほうは比較的よく維持されている。エレクトロニクス技術を利用した人工網膜は、残存する神経細胞を電気的に刺激することによって視力を回復しようとする装置である。埋め込まれるほとんどの部品は誘導コイルを通して電力が供給されるので、眼球内ケーブル経由で刺激電極にエネルギーを送るコイル-デコーダー-ケーブルアレイシステムを埋め込むために複雑な外科手術が必要になる。我々は、光起電力技術を利用した埋め込み型人工網膜について報告する。この人工網膜では、各ピクセルのシリコン・フォトダイオードが近赤外パルス照射を通して直接電力とデータを受け取り、神経を電気的に刺激する。パルス持続時間0.5~4 ms、しきい値ピーク放射照度0.2~10 mW mm −2 (眼の安全限界より2桁小さい)で、ラットの健常網膜および変性網膜に刺激が与えられた。70 µmの単一バイポーラー・ピクセルに照射することによって神経反応が引き起こされており、光起電力技術を利用した完全埋め込み型高ピクセル密度人工網膜の可能性が実証された。

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