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開放量子系を使った、パリティ・時間反転対称理論におけるノーシグナリング原理の実験的研究

Nature Photonics 10, 10 doi: 10.1038/nphoton.2016.144

古典光学においてパリティ・時間反転(PT)対称性で達成された実験的進展は、この10年間で最も重要な成果であり、単一方向の光輸送や単一モードレーザーなどの多くの新しい応用を生み出した。しかし、量子領域では、例えばノーシグナリング原理の潜在的な破れなど、いくつかの議論を呼ぶ効果がPT対称理論について提案されている。このため、PT対称理論が、よく確立された原理と矛盾しないかを解明することは重要である。今回我々は、空間的に離れたエンタングルした2つの光子を使って、PT対称理論に関するノーシグナリング問題を実験的に調べている。この系は、2つの光子の1つが事後選択される量子ゲートを通過し、PT対称発展を実質的に模擬する。今回の結果は、PT対称発展に成功した部分空間が単独で考慮されるとき、超光速の情報伝達が模擬されうることを示唆している。しかし、この部分空間は完全なエルミート系の一部にすぎず、PT対称発展が成功したか否かに関する追加の情報が必要で、この情報は受信者に最大でも光速で伝わるので、ノーシグナリング原理が維持される。

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