Research Highlights

スピントロニクス:二重のトポロジー

Nature Nanotechnology 2018, 318 doi: 10.1038/s41565-018-0099-x

トポロジカル物質には、擾乱が激し過ぎない限り外乱に対してロバストであるという特徴がある。このトポロジカル保護によって、こうした物質はスピントロニクスや量子計算におけるフォールトトレラントな用途向けの候補となっている。ここ数年で、物理学、化学、材料科学の分野において、新種のトポロジカル物質が予想され、合成され、調べられている。Zhangたちは今回、単一の試料に2つのトポロジカル特性を組み合わせている。彼らは、強磁性膜と磁性トポロジカル絶縁体(磁性TI)を結合することによって、巻き数が反対の2つのスキルミオンの組み合わせであるスキルミオニウムを強磁性膜に生成している。

著者たちは、分子ビームエピタキシーによって、CrをドープしたSb2Te3を成長させた。このバルク絶縁体には、低温において完全にスピン偏極するトポロジカル表面状態がある。そして、その上に、場所によって厚さが変わる強磁性層としてNi80Fe20のくさびが堆積された。Zhangたちは、X線光電子顕微鏡を用いて、TIの磁気秩序の転移温度以下に試料を冷却した際に、NiFe層にスキルミオニウムがどのように発達するか示している。この観測された磁気組織は、非磁性TIと結合した強磁性膜にも磁性TIのみにも現れなかった。従って、スキルミオンの出現は、NiFe膜とスピン偏極トポロジカル表面状態の結合に直接関連している。この重要な2種のトポロジカル物質の組み合わせは、トポロジカル特性を組み合わせた一連の複雑な試料への最初の一歩である。

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