Review Article

ウイルス性疾患:21世紀に出現する感染性ウイルス性疾患に対する治療法の開発

Nature Medicine 27, 3 doi: 10.1038/s41591-021-01282-0

21世紀になってから記録された一定地域内(エピデミック)、あるいは世界的規模(パンデミック)での主要なウイルス出現事象は、現在進行中で大きな被害をもたらしている新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックを含めて、すでに10を超えている。ウイルス性疾患の出現は加速すると予測されており、これらのデータは、将来の疾患流行時に使用するためのウイルスの属する科に特異的な治療薬、もしくは複数の科にわたって効果のある、広域的活性を持つ治療薬の開発という、先を見越した対策が必要であることを強く示している。そして、薬効範囲が広い広域スペクトル小分子化合物や直接作用型抗ウイルス抗体の開発だけを重要視するのではなく、以前に承認された、あるいは現在パイプラインにある薬剤の目的外使用をはじめとする、宿主因子を標的とする治療薬についても考察する必要がある。もう1つの強力な抗ウイルス治療薬候補は、RNAベースの治療薬である。既知のリスクに注目するだけではなく、アウトブレイク(集団発生)を起こしやすいウイルス科に焦点を絞る先制攻撃的な研究に力を注いで、アウトブレイクとそれへの対応の間のギャップを短縮するような戦略を提供できるようにしなくてはいけない。また、外来患者への使用のための経口投与可能な薬剤にも、可能であれば力を注ぐべきであり、ウイルスや免疫が引き起こす病態と闘うための併用療法の発見、治療可能時間域の拡大、薬物抵抗性の軽減も重要な問題であろう。このような取り組みには先見性が欠かせないし、また専用の財源に加えて、個人、政府と大学の連携も必要になるだろう。しかし、こうしたやり方は、世界の人々がCOVID-19のようなパンデミックを将来経験しないで済むという期待につながる。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度