Editorial

子どもたちを学校に戻すべき時だ

Nature Medicine 27, 10 doi: 10.1038/s41591-021-01543-y

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)の間、青少年は比較的リスクが低い集団と見なされてきた。データから見ると、子どものほとんどでCOVID-19の症状は軽く、これまで子どもたちが集団内での重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)伝播の主な供給源とされたことはない。しかし、COVID-19のパンデミックでは、デルタ、ラムダやミューのような変異株が出現していて、成人の多くがすでにワクチン接種を受けている国々では、子どもや青年のCOVID-19の相対的な発生数が増えている。重篤な症例はまだまれだが、この層の入院患者は増大しており、また長期にわたる後遺症が若年患者でも見られるようになった。子どもや青年でのワクチン接種は進んでおらず、この層のCOVID-19感染を懸念することは間違ってはいない。しかし、パンデミックが始まってすでに1年半が経過し、終わりはまだ見えてこない。この間に、小児へのCOVID-19の影響は、疾患そのものの影響だけではなくなっている。健康や教育、それに社会的成長への間接的な影響は甚大なものになりつつある。我々は今の時点で対処の仕方を変えるべきであり、対面教育に戻ることは、長期にわたるパンデミックのさまざまな影響を軽減するために不可欠だと思われる。

オンラインによる教育は低所得層では実現しにくい。もしそれが適切に行われたとしても、学校で経験する社会的相互作用や、健康で安定した人間関係を育てる機会を子どもに与えることはできない。こうした理由で、対面授業は子どもたちの幸福の中心となっており、パンデミックが拡大・継続するのに伴って世界的な優先事項となってきている。子どもたちを学校へ戻すことにリスクがないわけではないが、1年半にわたる集中的な研究で公衆衛生当局者たちはSARS-CoV-2伝播を監視し抑制する手段を持つようになった。WHOもUNICEFも、各国政府に対面授業を「主目標」とし、ワクチンの接種状況や地域の感染率、教室の換気などの状況を考察して緩和策を講じることをしきりに促している。

パンデミックでは、現場で働く人たちだけでなく子どもたちも、心の健康の問題で非常に大きなリスクにさらされた。パンデミックが子どもにもたらした損失がどんなものかが本当に明らかになるのは、ずっと先のことになるだろう。しかし、適当な緩和策と目的をはっきりさせた介入によって、子どもたちを正常な軌道に戻すことが今始められれば、パンデミックがもたらす結果は大きく変わるだろう。安全な対面授業への復帰は今後の変化に大きな違いをもたらすに違いない。

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