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COVID-19:SARS-CoV-2感染の有害転帰における免疫系補体と凝固の機能異常

Nature Medicine 26, 10 doi: 10.1038/s41591-020-1021-2

重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)感染の病態生理学的性質の解明は、治療や公衆衛生の戦略にとって重要である。ウイルスと宿主の相互作用は、疾患の調節因子の発見につながる可能性があり、またタンパク質の構造機能解析によって補体や凝固など、複数の免疫経路がコロナウイルスの標的であることが示されている。補体系や凝固系の調節異常を伴った病態が、病気に影響を与えるかを明らかにするために、我々は後ろ向き観察研究を行い、黄斑変性(補体の活性化が関わる疾患の代替指標)や凝固疾患(血小板減少症や血栓症、出血)の既往歴が、SARS-CoV-2が関連する病気や死亡のリスク因子であり、その影響は年齢や性別、喫煙歴とは無関係であることを見いだした。鼻咽頭スワブの転写プロファイリングによって、感染はⅠ型インターフェロンおよびインターロイキン6に依存する炎症応答に加え、補体経路や凝固経路にも強く関与することが明らかとなった。また、重症SARS-CoV-2疾患の候補遺伝子の遺伝子関連研究で、補体や凝固の重要な調節因子のミスセンスやeQTL、sQTLバリアントなどを含む、補体や凝固に関連すると考えられる遺伝子座が突き止められた。これらのデータによって、補体機能がSARS-CoV-2感染の転帰を調整することを示す根拠が提示されたのに加えて、感受性に関わる転写遺伝子マーカーと考えられるものが示された。今回の結果は、感染に関連する免疫や感受性、臨床転帰の決定因子や予測因子を明らかにするために、複合的な解析方法を使うことの重要性を示している。

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