Editorial

デジタル時代の医学

Nature Medicine 25, 1 doi: 10.1038/s41591-018-0322-1

デジタル機器を使って医療活動がアップグレードされた「デジタル医学」は高精度な個別化医療として、ヘルスケアと福祉に大改革をもたらすと期待されている。こうした改革の核心となるのは、個人レベルおよび集団レベルでの大量のデータの処理と統合を行い、患者、臨床医や健康システムが抱えるさまざまな健康問題への取り組みを助ける技術的解決法の開発である。デジタル時代のこの新しい医学は、誰もが医療的ケアにアクセスでき、患者が自身の健康に予防的に関わっていくことを可能にすると考えられており、また臨床医が、ますます大量かつ複雑になる患者のデータを費用効率よく、かつ無駄な時間を使わずに処理していくのを助けると期待されている。今月号の「Focus on Digital Medicine」は編集チームが総力を挙げて取り組んだ特集で、新しい研究、委託論文、それに成長しつつあるこの分野がもたらす好機と難問についての特別記事が掲載されている。

人工知能、特に深層学習は、医用画像や電子カルテの解釈に取り入れられている重要な手法で、その進歩の状況はPerspectiveの1つ(p. 24)で論じられている。診断をスピードアップし、治療の選択肢について助言を与え、医療サービスを通じて患者が経験する事象を最適化するAIツールは開発や革新が進んでいて、今後は認可が急激に増えると予想されている。もう1つのPerspective(p. 30)では、AIを用いる技術の規制環境が検証されている。Review(p. 44)で論じられているように、このデジタル革命がもたらす利益は容易に予想できるが、そこから派生するであろう難問の重大さについては予測が難しい。それらについてはReview(p. 37)で取り上げられている。

Nature Medicineが刊行された25年前、World Wide Web、いわゆるインターネットは利用が始まったばかりであり、医療にとって携帯電話やスマートウオッチは全く無縁の存在だった。現在、我々はデジタル革命の真っただ中にあり、この事態を余すところなく検証するのは価値ある試みといえる。本特集は、Nature Medicineの刊行25周年を祝う企画の始まりにすぎない。これからの1年間を通して、我々は医学の全体像を変えつつある若手研究者を取り上げるだけでなく、この25年間で医学がどのように変貌したかを振り返っていこうと考えている。その1つが、臨床試験の25年間での変遷をたどった今月号のNews Feature(p. 2)である。最後に、この四半世紀にわたり、我々のパートナーとしてNature Medicineの成功にご協力頂いた著者、査読者、そして読者の方々に深く感謝申し上げる。そして、我々はわくわくしながら、次の25年を迎えようとしている。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度