Editorial

実現可能な平等

Nature Medicine 24, 7 doi: 10.1038/s41591-018-0118-3

この10年間で、科学分野でのキャリアアップを目指す女性が直面する多くの難題が明らかになってきた。学術研究における男女の機会均等などを進める政策によって、この分野でのジェンダーギャップの解消は進行しつつあるとされ、米国では学士号および修士号の取得者の60%以上が女性となっている。また、ユネスコの最新の科学レポートによれば、科学および健康分野に関して世界中で取得されるPhDのほぼ半数は女性によるものである。しかし、科学研究分野でジェンダーギャップがスタートするのは女性研究者が博士号を取得した後である。大学教員への採用にあたってギャップはピークとなる。EU内では、教授の45〜50%を女性が占める国は5カ国のうちの1つだけであり、大学のシニアレベルの職については女性はわずか11%を占めるにすぎない。研究費の配分についても事情はほぼ変わらず、その結果として女性研究者は論文数が少なくなり、ジャーナルのレビューを依頼されたり招待論文の著者になったりすることもまれになっている。

研究機関でしばしば見られる無意識的なジェンダーバイアスを標的とするような教育プログラムによって偏見をなくし、またグラント配分に関わる特別のプログラムを制定して、働き盛りの女性研究者を支援するような思い切った一歩を踏み出すことは、科学研究における「ガラスの天井」を破り、ジェンダーの平等を実現することにつながるだろう。さらに、科学研究のあらゆる分野で性差別をなくすための変化を持続させ、達成された結果を長く維持していくには、多方面からの取り組みによって、全ての科学者にキャリアを通じて平等なチャンスを与え、才能が浪費されるのを防ぐような方策を設定することが必要となるだろう。

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