Editorial

臨床試験を多様化させる

Nature Medicine 24, 12 doi: 10.1038/s41591-018-0303-4

患者集団で検証される新しい治療法の安全性と有効性は、被験者の性別、人種、年齢、生活習慣のような条件によってばらつく可能性がある。薬の有効性のこのようなばらつきは、多様な患者からなる集団で臨床試験を行うことによってのみ検出可能になる。1993年、米国政府は、連邦から助成を受けて行われる臨床研究に女性と社会的少数者を優先的に参加させることをNIHに要請する法律を通過させた。さらに2015年には、承認された全ての新薬に関して、治験参加者の性別、人種と年齢についての解析が含まれるDrug Trials SnapshotがFDAによって公刊されるようになった。

こうしたバックアップ態勢にもかかわらず、非営利ニュースメディアのProPublicaなどがSnapshotのデータを解析した最近の報告では、事態は改善されていない。FDAが2015年以降に承認した31の抗がん剤のうちの24の治験では、アフリカ系アメリカ人の割合は5%以下であった。ちなみに、米国の人口にアフリカ系アメリカ人の占める割合は13.4%である。また、多発性骨髄腫を標的とする4つの薬の治験ではアフリカ系アメリカ人は参加者のほぼ5%だったが、多発性骨髄腫と診断された人たちの14%がアフリカ系アメリカ人である。

All of Us initiativeのように、集団の健康、ゲノム、生活環境の包括的プロファイルを作成しようという最近の試みは、集団の多様性という問題の認識を高めるものだ。遺伝や生活習慣が健康や薬剤の応答性の決定に果たす役割が次第に認識されるようになってきた現在、臨床試験で多様性を優先事項とする機は熟したといえる。社会的少数者の臨床試験への参加を増やすための努力は、全ての製薬企業が優先事項とするべきである。

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