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マラリア:一酸化窒素の低い生物学的利用能は実験的脳性マラリアの発生の一因である

Nature Medicine 12, 12 doi: 10.1038/nm1499

脳性マラリアの発症に一酸化窒素(NO)が果たす役割に関しては異論があるが、ほとんどの研究者は、原虫を殺すために産生された高濃度のNOによって脳性マラリアが発症すると考えている。今回、こうした高NO生物学的利用能仮説を、実験的脳性マラリア(ECM)について検討したところ、低いNO生物学的利用能の方がECMの発症を進めることがわかった。血管中のNO合成酵素を欠くマウスには寄生虫血症が認められ、死亡率は対照マウスと同等であった。外因性NOは、寄生虫血症に影響しなかったが、著しいECM予防効果を示した。また外因性NOで処理したマウスと非感染マウスは、対照感染個体が瀕死状態にある時期にいたっても、臨床的に見分けがつかなかった。外因性NOの投与は、脳内のNOを介するシグナル伝達を回復させ、血中の炎症誘発性のバイオマーカーを減少させ、脳内への血管漏出および点状出血を大幅に減少させた。ECM発症中の血管系における低いNO生物学的利用能の一部は、血中でNOを除去するように働く遊離ヘモグロビンの増加、血中アルギニンの減少、血液および赤血球中の低亜硝酸濃度によって引き起こされた。外因性NOは、血漿中のNO除去性の遊離ヘモグロビンを不活性化させ、亜硝酸濃度を非感染マウスに見られる濃度まで回復させた。したがって、高NO生物学的利用能ではなく低NO生物学的利用能こそがECM発症に寄与すると結論される。

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