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適応度が不均一な多剤耐性結核菌の流行をモデル化する

Nature Medicine 10, 10 doi: 10.1038/nm1110

近年、多剤耐性結核菌(MDRTB)が将来もたらす負荷の予測に数理モデルが用いられるようになった。こうしたモデルでは、多剤耐性が結核対策に及ぼす脅威は、MDR株の相対的な「適応度」の影響を受けると示唆されており、これはMDR株の平均的な適応度が薬剤感受性の平均適応度より低い場合には、耐性出現が結核対策の成功を脅かさないことを意味している。結核菌(M.tuberculosis)の多剤耐性は、表現型への影響がさまざまなことが示されている多数の異なる単一遺伝子座変異の連続的な獲得によって生じる。今回、MDR株の相対適応度が不均一であると仮定して、初期の推定適応度がMDRTBの出現に及ぼす影響をモデル化した。その結果、MDR株の平均相対適応度が低く、良好に機能する対策プログラムが実施された場合であっても、ある程度の適応度を示すMDR株の一部が、薬剤感受性株と低適応度MDR株の両方を競争によって最終的に排除することがわかった。これらの結果は、MDR感染者からの感染を抑える特別の対策をとらない場合、現行の疫学的指標およびMDRTBがもたらす負荷の短期傾向は、MDRTB株が封じ込め可能なことを示す証拠とならないことを示している。

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