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亜硝酸の噴霧状吸入には低酸素感受性でNO依存性の選択的肺血管拡張作用がある

Nature Medicine 10, 10 doi: 10.1038/nm1109

血液中の亜硝酸イオンは、デオキシヘモグロビンおよびおそらく他のヘムタンパク質とのヘムに基づく一酸化窒素(NO)産生反応を介して低酸素性血管拡張にかかわっている。我々は、この生化学反応が新生児肺高血圧症の治療に利用できるのではないかと考えた。こうした疾患は、肺血管収縮、右-左シャントという病態、全身性低酸素血症を特徴とするNO不足状態である。まず亜硝酸ナトリウムをエアロゾル状にして、低酸素性または正常酸素条件下で肺高血圧を示すヒツジ新生仔に吸入させた。亜硝酸の吸入により、低酸素性肺高血圧の急速かつ持続的な低下(約65%)が認められ、この規模は20p.p.m.のNOガス吸入時の効果に匹敵した。また血圧低下に伴って、呼気ガス中にNOが速やかに出現した。エアロゾル状の亜硝酸で誘導された肺血管の拡張は、デオキシヘモグロビンおよびpH依存性であり、鉄-ニトロシルヘモグロビンの血中濃度の上昇と関連していた。生理食塩水に溶解した亜硝酸の噴霧状短期投与が選択的で持続的な肺血管拡張を引き起こし、血中メトヘモグロビン濃度の臨床的に有意な上昇が認められなかったことは治療的見地から注目される。これらの結果は、亜硝酸が血管拡張作用をもち、ヘモグロビンの脱酸素およびプロトン化と共役した過程でNOへ変換されて作用するという考えを裏付けており、新生児肺高血圧症の簡単で安価な新治療法となる可能性を示している。

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