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カンナビノイドのシグナル伝達の異常は胚の卵管輸送を妨げる

Nature Medicine 10, 10 doi: 10.1038/nm1104

子宮外妊娠は生殖健康における大きな問題である。子宮外妊娠を引き起こす原因の多くはまだ不明であるが、原因の1つに卵管における胚の滞留がある。本論文では、マウスでカンナビノイド受容体CB1に対し遺伝学的または薬理学的な方法でサイレンシングを起こすと、多くの胚が卵管内に滞留し、最終的に妊娠障害が起こることを示す。胚の滞留はβアドレナリン作動性受容体のアゴニストであるイソプロテレノールによって回復する。卵管での胚の輸送障害はmethanandamideを投与した野生型マウスにおいても観察される。以上の結果を総合すると、カンナビノイドのシグナル伝達の異常が、卵管での胚の正常な輸送に重要な卵管平滑筋の収縮と弛緩との協調を妨げているものと考えられる。CB1とβ2アドレナリン作動性受容体が卵管筋層に共存していることは、内在性カンナビノイドに対する正常な基礎的感受性とアドレナリン受容体との共同作業によって、胚が子宮まで正常に移動するように卵管の運動性が調整されていることを示している。本研究は新しい制御機構を見いだしただけでなく、子宮外妊娠との臨床的な関連を示唆するものである。

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