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好みのうるさいランと菌

Nature ダイジェスト Vol. 9 No. 5 | doi : 10.1038/ndigest.2012.120506b

菌根菌との敏感な関係が、ランの成長を左右する

ランが珍重される理由は、美しさとそのはかなさにある。南極を除くすべての大陸に生息するが、多くが絶滅の危機にあり、環境変化にとても敏感だ。野生のランの種子は非常に小さく、菌根菌という菌類が栄養分を与えないと成長しない。

これらの菌根菌についてはほとんどわかっておらず、多くは名前さえない。わかっているのは、菌根菌がランの根に入り込み、ランはそれを消化して必要な栄養を得ているということだけだ。最近、4年がかりの研究から、菌根菌が成長する場所と、どんな条件だとランが発芽するのか、新たな手がかりが得られた。Molecular Ecology電子版1月24日号に発表された成果は、希少品種の保護に役立つはずだ。

メリーランド州にあるスミソニアン環境研究センターの生態学者Melissa McCormickが率いる研究チームは、米国内に自生する3種のラン(いずれも東部に自生し、絶滅が危ぶまれている)を6か所の試験サイトに植えて成長を観察した。試験サイトのうち3か所は樹齢50~70年の木が生える若い森で、残り3か所は樹齢120~150年の古い森だった。ランを植えた区画の地面をそのままにするか、落ち葉または腐敗中の木のいずれかで覆い、各区画の半分にランの成長を促進することが知られている菌をまいた。

また、それぞれの森に元から存在する真菌を特定した。この真菌は子実体がなくて見つけにくいため、土壌中のDNAを調べて、どこにどれだけの菌がいるかを特定した。その結果、古い森にはランを助ける菌類が若い森の5~12倍も存在し、菌の種類も古い森のほうが多様なことがわかった。

成長に必要な条件はランの種類によって異なった。小さな白い花をつけるGoodyera pubescensの場合、成長に十分な菌類が存在するのは古い森だけだった。若い森に菌類をまいても、腐食中の木と菌類を組み合わせても、このランの種子は発芽しなかった。一方、小さな薄紫色の花をたくさんつけるTipularia discolorを好む菌は、若い森にも古い森にも同様に広く見られたが、腐敗中の木の上でないと発芽は促されなかった。さらにLiparis liliifolia(スズムシソウ)を助ける菌は野生環境では少なかったが、その菌を人工的に与えると発芽した。

現在のラン保護計画では、こうした菌類の多少など考慮していない。菌類を識別する技法と知識が整っていないからだ。McCormickは、今回の技術によって、どんな環境条件が菌類に影響するか、解明が進むのを期待している。

(翻訳:粟木瑞穂)

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Nature ダイジェスト Online edition: ISSN 2424-0702 Print edition: ISSN 2189-7778

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