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超新星爆発の正体を初めて観測

左は超新星爆発の前の回転花火銀河(M101)。右は最大に明るくなった超新星が見える回転花火銀河。

BJ FULTON(LCOGT)、PTF、宇宙望遠鏡科学研究所

2011年8月、地球からわずか640万パーセク(2100万光年)の回転花火銀河(M101)で超新星爆発が起こった。SN 2011feと名付けられたその超新星は、この25年で最も太陽に近く、爆発の光が地球に到達してからわずか11時間で発見された。これにより、Ia型超新星爆発に関する理論の正当性が証明された。それは、Ia型超新星爆発では、白色矮星(太陽ほどの質量を持ちながら地球程度の大きさしかない、核反応を終えた星)が伴星から物質を吸い上げ、徐々に質量が増加してついに熱核爆発を引き起こし、バラバラになるという理論だ。

今回、2つの研究チームがSN 2011feの観測結果を分析し、爆発した星の種類の同定とその伴星の種類の限定について発表した1,2

容疑者は小さかった

ローレンス・バークレー国立研究所(米国カリフォルニア州)のPeter Nugent ら1は、衝撃波のエネルギーを計算し、爆発した星の直径は太陽の直径の10分の1よりも小さいと報告した(Nugentはもう1つの論文の共著者でもある)。つまり、爆発した星は、高密度で小さな白色矮星だったことが強く示唆される。

また、白色矮星の組成もわかった。爆発初期段階での、全く燃えていない部分や星の低密度の最外層に含まれる物質のスペクトルを調べた結果、炭素の存在や、初めて高速で運動する酸素を示すデータが得られ、爆発した星は主に炭素と酸素でできた白色矮星だったと結論付けられた。

さらに研究チームは、白色矮星の伴星は赤色巨星ではなく、中心核でまだ水素を燃やしている星だったとも結論した。爆発した星から広がる衝撃波が赤色巨星に衝突したのなら、爆発は観測されたよりもずっと明るくなっていたはずだからだ。

伴星の正体は?

米国カリフォルニア大学バークレー校のWeidong Liらも、別の解析から、伴星は赤色巨星ではないと結論した2。Liらは、超新星爆発が起こる前にハッブル宇宙望遠鏡が撮影した回転花火銀河の高解像度画像を分析した。その画像には、超新星が現れた位置に星はなかった。もし伴星が赤色巨星だったら、明るく、膨張しているため、容易に見えたはずである。

カリフォルニア大学サンタクルーズ校のStan Woosleyは、「今回の観測から伴星の正体まではつかめませんでしたが、Ia型超新星の標準的な理論モデルは立証されました。爆発の中心にある白色矮星の種類に至るまで解明できたのです。一方、その伴星は、白色矮星へ非常に多くの質量を与えたはずであり、とても小さい星や暗い星ではなかったでしょう」と話す。

Ia型超新星の観測は、宇宙の膨張を調べるための「標準光源」として広く使われている。Nugentは、「今回の2つの論文により、どのようにして爆発が起こるのかが詳細に解明され、Ia型超新星は標準光源としてさらに有用なものになるでしょう」と話す。

Woosleyは、「SN 2011feの観測結果は、詳細で信頼性のあるIa型超新星理論モデルの作成に際し、強い制限条件となるでしょう。さらに、ほかのIa型超新星の観測を行ってその多様性を解明すれば、超新星観測で可能なかぎり正確に宇宙の膨張を測定できるでしょう」と指摘する。

このためには、より多くの超新星をより精密に観測する必要がある。SN 2011feは、パロマ・トランジェント・ファクトリー(米国カリフォルニア州)の自動望遠鏡によって発見された。このシステムは一晩中夜空を観測し、天体の明るさが変化したら天文学者たちに通報する。さらに、2020年までには、口径8.4mの自動望遠鏡、大型シノプティックサーベイ望遠鏡が稼働し始める予定だ。この望遠鏡は観測できるすべての空を週に1回ずつ探索する。Ia型超新星の伴星の種類や組成の解明に重要なツールとなるだろう。

翻訳:新庄直樹、要約:編集部

Nature ダイジェスト Vol. 9 No. 3

DOI: 10.1038/ndigest.2012.120305

原文

Early observations identify star at heart of nearby supernova
  • Nature (2011-12-14) | DOI: 10.1038/nature.2011.9646
  • Ron Cowen

参考文献

  1. Nugent, P. E. et al. Nature 480, 344–347 (2011).
  2. Li, W. et al. Nature 480, 348–350 (2011).