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糖鎖に応答する新たなエピゲノム制御を発見

加藤 茂明

Nature ダイジェスト Vol. 9 No. 3 | doi : 10.1038/ndigest.2012.120322

ヒトの遺伝子は2万個ほどしかないが、それらを効率よく使うシステムとしてさまざまな仕組みが知られている。最近このようなシステムの1つとして、後天的にDNAや染色体の開き具合を調節するエピゲノムが注目されるようになってきた。このエピゲノム制御のカギを握るのは、DNAやヒストンの一部に施される化学修飾だ。東京大学分子細胞生物学研究所の加藤茂明教授は、ある酵素に「小さな糖」が付加されることで、化学修飾のスイッチが制御されていることを突き止めた。

核内受容体からエピゲノムへ

–– Natureダイジェスト:エピゲノム研究を始められたきっかけは?

加藤:実は、5年ほど前までは、自分の研究がエピゲノムの領域にあるという認識すらありませんでした。私は一貫して、ステロイドホルモンやビタミンAやDなどの「脂溶性の低分子生理活性物質」の研究を続けてきました。このような生理活性物質は、核内の受容体(核内受容体)を介して機能を発揮します。核内受容体は48種が知られているのですが、私はそれらのリガンドとなる新規の生理活性物質の探索や機能解析をしてきました。

図1:GlcNAcが付加されたヒストンを抗体で染めたショウジョウバエの染色体。
GlcNAcが付加された部位の染色体がほどけて活性化されていることがわかる。

例えば、男性に女性ホルモンを投与すると体が女性化しますが、これは女性ホルモンに「女性特異的な遺伝子」を活性化する作用があるためです。こうした現象は40年以上前から知られ、私たちの研究仲間の間では、「ステロイドホルモンには、染色体レベルの変化を引き起こし、特定の遺伝子を活性化させる働きがあるにちがいない」と考えられてきました。まさにこれがエピゲノムだったわけですが、当時はエピゲノムの概念すらなく「クロマチンメモリー」などと呼ばれていました。

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Nature ダイジェスト Online edition: ISSN 2424-0702 Print edition: ISSN 2189-7778

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