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インド洋でプレートが分裂中?

Nature ダイジェスト Vol. 9 No. 12 | doi : 10.1038/ndigest.2012.121208

原文:Nature (2012-09-26) | doi: 10.1038/nature.2012.11487 | Unusual Indian Ocean earthquakes hint at tectonic breakup

Helen Shen

2012年4月にスマトラ島沖のインド洋で連続して発生した2つの巨大地震は、インド・オーストラリアプレートが分裂しつつある証拠かもしれない。

2012年4月11日、インド・オーストラリアプレートの内部で少なくとも4つの断層が同時に破壊され、マグニチュード8クラスの地震が2時間の間隔で2回発生した(赤い星印は震央)。

ユタ大学地震観測所Keith Koper

2012年4月11日にインド洋を揺るがせたマグニチュード8.6と8.2の巨大地震は、地球の表面を覆うプレートに、新たな境界が形成されつつあることを示しているのかもしれない。2012年9月26日にNatureオンライン版に発表された3本の論文によると1-3、2つの地震や関連する現象を引き起こしたのは、1枚のインド・オーストラリアプレートを引き裂こうとする地質学的応力であったようだ。

インド・オーストラリアプレートの分裂については、1980年代から議論されていた4。高等師範学校(フランス・パリ)の地球物理学者で1本目の論文の筆頭著者Matthias Delescluseは、「4月11日の地震は、その劇的な例でした」と語る。「新たに形成されたプレート境界の例として、最も明白なものだと言えます」。

プレートテクトニクス理論によれば、インド・オーストラリアプレートの内部で変形が始まったのは約1000万年前だった。このプレートは北に向かって移動しているが、インド側部分はユーラシアプレートに激しく押しつけられており、ヒマラヤ山脈が隆起してインド亜大陸の動きも遅くなっている。一方、プレートのオーストラリア側部分は、何の障害も受けずに前進を続けている。このようなアンバランスのため、インド・オーストラリアプレートには張力によるねじれが生じ、中間のインド洋部分でプレートが引き裂かれつつある、と考えられている。

Delescluseのチームは、今回の地震が起こる少し前から、応力変化のモデルを作り、地震応力について検討した。インド・オーストラリアプレートの東側のスンダプレートとの境界では、2004年と2005年にも地震が発生している。特に2004年のマグニチュード9.1の超巨大地震はインド洋全域に大津波を引き起こした。Delescluseらは、プレートの中心部分にもとから閉じ込められていた応力が、この2つの地震によってさらに高まり、2012年の地震が発生した可能性が高いことを明らかにした。

大地震のほとんどは、2枚のプレートが境界で衝突し、その一方が他方の下に沈み込む所で発生する。一方、プレートどうしやその一部が断層線に沿って水平にすべるときは、普通、小規模な横ずれ地震が発生する。しかし、4月11日の最初の地震は、記録史上最大の横ずれ地震であり、プレート境界から離れた場所で発生した地震としても最大級であった。要するに、予想を裏切る巨大地震だったのだ。

2本目の論文2では、プレートの内部に広く蓄積していた応力が4月11日の最初の地震で解放され、前例のない複雑な断層パターンができたことを明らかにしている。ほとんどの地震が単一の断層に沿って揺れるのに対して、今回の地震では4つの断層に沿って破壊が生じ、そのうちの1つは、実に20~30mもすべっていた。執筆者の1人、カリフォルニア大学サンタクルーズ校の地震学者Thorne Layは、「あいた口がふさがりませんでした」と語った。

以前の研究でも、複数の横すべり断層は特定されていた5。しかし、すべり量がここまで詳細に明らかにされたのは今回が初めてだ。スタンフォード大学(米国カリフォルニア州パロアルト)の地震学者Gregory Berozaは、「Layのチームの論文は、この非常に重要な地震を、見事に解剖して見せています」と言う。

3本目の論文では3、4月11日の巨大地震に続く6日間、世界中で発生したマグニチュード5.5以上の地震の回数が、ふだんの5倍も多かったことが明らかにされている。通常、余震は、主震の発生場所のすぐ近くで起こるのが一般的だ。ところが4月11日の地震の後に起きた余震は、時期も範囲も、従来の定義に疑問を投げかけているわけだ。

カリフォルニア工科大学(米国パサデナ)の地震学者金森博雄は、「2012年4月11日の地震は、研究対象としてきわめて重要な地震です」と言う。検証すべき異例の特徴をいくつも備えたこの地震は、地震が発生する仕組みに関して、従来の考え方を覆す可能性が高い。

(翻訳:三枝小夜子、要約:編集部)

参考文献

  1. Delescluse, M. et al. Nature 490 240–244 (2012).
  2. Yue, H. et al. Nature 490 245–249 (2012).
  3. Pollitz, F. et al. Nature 490 250–253 (2012).
  4. Wiens, D. A. et al. Tectonophysics 132, 37-48 (1986).
  5. Meng, L. et al. Science 337, 724-726 (2012).

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Nature ダイジェスト Online edition: ISSN 2424-0702 Print edition: ISSN 2189-7778

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