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転移前のがん細胞をキャッチ

Nature ダイジェスト Vol. 9 No. 11 | doi : 10.1038/ndigest.2012.121112b

超高速カメラにより、血液検査が可能になった

がんによる死亡の90%は、腫瘍から飛び出したがん細胞の転移による。血液中を循環するがん細胞を効率的に検出するため、血液検査法の開発が何十年も続いてきた。しかし、針の山から1本の針を探し出すようなもので、それは非常に難しかった。1mlの血液に、赤血球は約50億個、白血球は約1000万個含まれているのに対し、がん細胞はたった10個しか含まれていないからだ。

しかし、カリフォルニア大学ロサンゼルス校の研究グループが開発した特別なカメラなら、新たな腫瘍を形成する前のがん細胞をとらえて、患者の生存率を大きく高められるかもしれない。この成果は7月の米国科学アカデミー紀要PNASに報告された。

システムの心臓部は2009年に導入された超高速顕微カメラで、毎秒600万コマの画像を撮影できる。このSTEAM(連続時間符号化振幅顕微)カメラは、10億分の1秒という非常に短いレーザーパルスを使って撮像する。シャッタースピードは27ピコ秒(1ピコ秒は1兆分の1秒)で、通常のデジタルカメラの100万倍の速さだ。

カリフォルニア大学のカメラは、各レーザーパルスの照射結果をデータに変換し、それらのデータをもとに高速画像を組み上げる。このSTEAMカメラにマイクロ流体素子と高速の画像処理プロセッサーを付け加え、流体素子の流路を通る細胞の鮮明な画像をとらえるという。

チームはこの技術を使って、血液試料中の乳がん細胞を特定した。「細胞の形、大きさ、外観のほか、表面の生化学的な特徴を見ています」と、論文の主執筆者でカリフォルニア大学ロサンゼルス校から東京大学に移った合田圭介(理学系研究科教授)は説明する。「がん細胞は白血球や赤血球よりも大きい場合が多く、また、形も赤血球や白血球に比べると定まっていないことが知られています」。血液検査は侵襲性が比較的小さいので、より頻繁にスクリーニング検査が受けられるようになるだろうと期待している。

(翻訳:粟木瑞穂)

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Nature ダイジェスト Online edition: ISSN 2424-0702 Print edition: ISSN 2189-7778

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