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小児向け医薬が抱える問題

Nature ダイジェスト Vol. 9 No. 10 | doi : 10.1038/ndigest.2012.121006a

小児薬で、安全性が臨床試験で証明されたものは少ない

小児科医を何十年も悩ませている問題がある。それは、子どもが病気にかかって薬が必要になっても、小児用に認可されている薬が少ない、ということなのだ。

最近の調査と2012年2月に米国政府がまとめた報告書によると、ほとんどの場合、医師は適切なデータがないままに大人用の薬を処方せざるをえず、過剰投与や副作用、長期にわたる健康問題などのリスクに、子どもたちをさらす結果となっている。米国議会は2012年6月末に関連の法律を強化し、製薬会社に小児患者を対象にした臨床試験を進めるよう促したが、長期的安全性に関する問題は解決しそうにない。

製薬会社は、子どもを対象とした臨床試験の実施に抵抗している。その理由は、リスクが高く、費用がかかり、困難であるうえ、小児用医薬品が世界市場に占める割合が小さいため、ビジネスの観点からすると、ほとんど割に合わないからだ。

だが、薬の代謝は子どもと大人で異なる。「子どもは小さな大人ではない、という格言は真実です。単純に投与量を大人より減らせば、子どもにも同じ効果が期待できるかというと、そうではないのです」と、フィラデルフィア小児病院の小児科医で薬理学者でもあるPeter Adamsonは言う。

例えば2000年に行われたある研究では、抗てんかん薬ガバペンチン(商品名ニューロンチン)の場合、5歳未満の患者には、単純に予想される量よりも投与量を増やさねばならず、そのため、攻撃性や過剰行動といった副作用を引き起こす可能性があることが明らかになった。鎮痛剤や抗生物質、ぜんそく治療薬なども、オフラベル処方(医師の判断に基づいて、承認されていない用法・用量で使用すること)されることが多い。

Adamsonは、米国科学アカデミー医学院の2012年2月の報告書(共著)の中で、小児薬の安全性に関する別の問題点も取り上げている。全く公表されていない研究があること、小規模すぎて臨床的に有用なデータを得られていない研究があること、子どもに投与した場合の長期的影響を調べた研究はわずかであること、といった問題だ。

2012年6月の法改正によって、米国食品医薬品局(FDA)が製薬企業に対して、臨床試験を完遂し、新生児に対する臨床試験を行い、過去の研究を公開するよう求める権限が強まるのは確かだ。しかし、子どもたちの長期的健康に薬がどう影響するかという重要なデータを、いかにして入手するのか、そのための対策が抜け落ちている。

(翻訳:粟木瑞穂)

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Nature ダイジェスト Online edition: ISSN 2424-0702 Print edition: ISSN 2189-7778

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