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食べ物から来たマイクロRNA

Nature ダイジェスト Vol. 9 No. 1 | doi : 10.1038/ndigest.2012.120106b

食物が遺伝子の発現を調節している可能性がある。

「食べ物が体を作る」。この古い格言を気にして、食べ物の選択に気をもんできた人は少なくない。だが、この格言が文字通りの真実だとしたらどうだろう? 食物由来の物質があなたの細胞の最深部にある指令室に入り込んで、根本的な遺伝子発現を左右しているとしたら?

南京大学(中国)のChen-Yu Zhangらが行った植物・動物間マイクロRNA移動の研究によると、それが実際に起きている。マイクロRNAはヌクレオチド(遺伝物質の構成要素)の短い配列で、タンパク質をコードしてはいないが、特定の遺伝子に作用して、その遺伝子にコードされたタンパク質の生成を阻止する。Zhangらは30人の被験者から血液を採取し、米、小麦、ジャガイモ、キャベツなど食用作物に由来するマイクロRNAの有無を調べた。

その結果、日常的に食べられている植物に由来する約30種類のマイクロRNAが被験者の血中に含まれていることがわかった。さらに、これらのマイクロRNAは細胞の機能を変えることができるようだ。例えば米に由来するある特定のマイクロRNAは、血中からの悪玉コレステロールLDL(低比重リポタンパク質)の除去を調節している受容体に結合し、その働きを阻害していることが示された。

これまでは知られていなかったが、マイクロRNAはビタミンやミネラルと同様、食物からもたらされる機能性分子なのかもしれない。研究成果はCell Researchに発表された。

作物が人間を変える?

植物由来のマイクロRNAが人間の生理機能調節に関与しているというこの発見は、私たちの体が高度に統合された生態系であることを浮き彫りにしている。また、この発見によって「共進化」に関する理解が進む可能性もあるとZhangは言う。共進化は、ある生物種の遺伝的変化が別の種の変化を誘発する現象だ。

例えば私たちが大人になっても牛乳中のラクトースを消化できるようになったのは、ウシが家畜化された後だった。これと同様に、人間が栽培した作物も人間を変えてきたのではないだろうか? Zhangの研究もまた、自然の中で孤立して存在しているものはないことを気付かせてくれる。

(翻訳:粟木瑞穂)

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Nature ダイジェスト Online edition: ISSN 2424-0702 Print edition: ISSN 2189-7778

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