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多点の弱い相互作用を利用して、細胞のふるまいを制御する

岩田 博夫

Nature ダイジェスト Vol. 9 No. 1 | doi : 10.1038/ndigest.2012.120126

半導体デバイス、マイクロマシン、ナノテクなど微細な世界の操作を得意とする日本。これらのノウハウを医療の場でも応用すべく、その基盤作りとして「ナノメディシン分子科学」のプロジェクトが始まった。高分子材料科学が専門の京都大学再生医科学研究所の岩田博夫所長は、これまで人工膵臓の研究開発を続けてきており、今回のプロジェクトにおいて「多点の弱い相互作用を利用した分子、細胞の制御」の研究代表を務める。いったいどんなアイデアで細胞を制御しようとしているのだろうか。

–– Nature ダイジェスト:「多点の弱い相互作用を利用する」とはどういうことでしょうか?

岩田:「ゴキブリホイホイ」は、多点の弱い相互作用をうまく利用した製品です。ゴキブリは6本の肢のうち、3本を1組にして(左前・右中・左後と右前・左中・右後)、交互に動かして歩きます。3本の肢が同時に動作するため、1点ごとの接着力がそれほど強くなくても、3本を同時に粘着剤からはがすことはできません。

実は、生体にも、多点の弱い相互作用をうまく利用している例が多くあります。例えば、細胞は細胞間や細胞外マトリックスへの接着によって決まった場所に固定されていますが、ひとたび傷つくと、周囲と接着しながらも組織修復のために傷口に移動していきます。多点の弱い相互作用は、状態を瞬間的に変化させることはできませんが、少しずつ確実に変化させることができます。この力を利用して、細胞に機能性物質を接着させるとか、特定の細胞どうしを確実に接着させて凝集塊を作るといった細胞の制御を可能にするのが私の夢の1つです。

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Nature ダイジェスト Online edition: ISSN 2424-0702 Print edition: ISSN 2189-7778

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