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2つの宇宙観測計画が統合?

Nature ダイジェスト Vol. 8 No. 7 | doi : 10.1038/ndigest.2011.110729

原文:Nature (2011-04-28) | doi: 10.1038/472402a | Astronomers mull merger of missions

Eugenie Samuel Reich

宇宙起源を探る研究者と太陽系外惑星を探索する研究者が、宇宙観測ミッションについて話し合いを進めている。

米国航空宇宙局(NASA)の緊縮予算のため、創造的な共同研究化が奨励されている。それを踏まえ、生物が生存可能な太陽系外惑星を探索している科学者グループが、星や銀河の起源を調べるために計画されている宇宙望遠鏡を利用できるかどうか検討を始めた。

ここ数か月の間、NASAのCOPAG(Cosmic Origins Program Analysis Group)は、銀河の構造と詳細な形成過程を調べるために計画されている大型宇宙望遠鏡(2020年以降に打ち上げ予定で、紫外線と可視光線の波長域で観測)の見通しを検討してきた。これを聞きつけたのがExoPAG(Exoplanet Exploration Program Analysis Group)で、両グループ合同の会議が4月26日に開催されたのだ。共同司会者の一人で、宇宙望遠鏡科学研究所(米国メリーランド州ボルティモア)の天文学者Kenneth Sembachは、当初は少人数の会議を想定していた。ところが実際には49人の天文学者が、直接あるいはテレビ会議、電話会議の形で集まった。「会議が独り歩きを始めてしまいました」と彼は言う。

系外惑星の研究者は、新たな機器や装置を積極的に求めている。NASAは、太陽系外で地球型惑星を発見するための宇宙望遠鏡「ケプラー」を打ち上げ、現在、太陽を周回するケプラーからは大量のデータが送られてきている。ケプラーが検出できるのは、地球から約184~920パーセクの範囲内にあって、母星の前面を通過する惑星だ。原則として、それら惑星の質量や組成は測定できない。研究者は追加ミッションを実施したいと考えている。目的は、地球に最も近い100個の太陽類似星の周囲にある地球型惑星の画像を十分な分解能で求め、その大気中に含まれる微量の酸素や水分を検出することだ。

NASAの「地球型惑星探査機」は、そのためのプロジェクトだったが、2007年に無期延期されてしまった。しかし、NASAは、その後も年間600万ドル(約4億8000万円)の予算を支出して、系外惑星探索のための技術開発を継続している。現在、系外惑星の研究者は、COPAGと協働することが成功戦略だと考えている。ペンシルベニア州立大学(米国ユニバーシティ・パーク)の惑星科学者で、ExoPAGのグループ長を務めるJim Kastingは、COPAGとExoPAGは双方とも50億ドル(約4000億円)以上もする口径4~8mの宇宙望遠鏡を欲しがっているわけで、「両者の関心は基本的に一致しています」と話す。

これらのミッションは、全米科学アカデミーが2020年に実施予定の次なる「天文分野10年研究計画」で、主役の座を競うことになるだろう。同じ技術を用いて2つの異なる研究を実施できるのかどうか、という大問題が今後の会議で検討されることになる。

宇宙起源探査ミッションでは、できるだけ大量の紫外光と可視光を集めて、近傍銀河における銀河間ガス、星の形成、太陽類似星の画像を得る必要がある。一方、系外惑星を探索する宇宙望遠鏡では、コロナグラフを用いて親星からの直接光を遮断する必要があり、地球型惑星が主に放出する可視波長と近赤外波長に対して高い感度を有する必要がある。2014年に打ち上げ予定の口径6.5m赤外望遠鏡であるジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)は、大型惑星なら検出できるが、地球サイズの惑星を検出するには感度が低過ぎる。

共同研究を前に進めるカギは、宇宙望遠鏡の鏡面用の反射コーティングが開発できるかどうかだとみられている。これがうまく実現すれば、紫外域から赤外域までの光を受けることができ、また、太陽系外の「地球」の画像を得る上で障害となる入射光波の歪みを防止できるからだ。

ただし、マサチューセッツ工科大学(米国ケンブリッジ)で系外惑星探索研究を行うSara Seagerは、こうした戦略に賛成していない。「欲張りに聞こえるかもしれませんが、誰もが共同利用できるようなミッションにするのは自己欺瞞です」と彼女は言う。今後10年間に打ち上げ予定の小規模な系外惑星探索ミッションは、地球型惑星を新たに検出できるほどの感度はない。しかし、最終的に検出できるような専用宇宙望遠鏡に向かって、多くの知識や経験が蓄積されるはずだ、と彼女は付言する。

これに対してサンノゼ州立大学(米国カリフォルニア州)でケプラープロジェクトの副チームリーダーを務めるNatalie Batalhaは、合同ミッションにすることは、JWST のコスト高騰によって悪化したNASAの資金難への対応策としては理にかなっていると思う、と話す。「いずれも非常に多額の費用がかかり、内容も野心的なため、ほかのプログラムも上手に活用する方法を見つけるべきです」と彼女は話している。

(翻訳:菊川要)

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Nature ダイジェスト Online edition: ISSN 2424-0702 Print edition: ISSN 2189-7778

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