Research Highlights
小枝にまぎれて身を守る
Credit: A. DARRINGTON/ALAMY
一部の動物種は、餌にならないような物になりすまし、捕食者に見つからないようにしている。こうしたカムフラージュは受動的なものではなく、そこには被食者と捕食者の間の特異な行動の変化がかかわっている、とエクセター大学(英国)のJohn Skelhornらは指摘している。
シャクガ科エダシャク類(Selenia dentaria)の幼虫は、木の小枝そっくりの姿をしている(右写真)。Skelhornらの実験では、本物の小枝の間にいるエダシャク類の幼虫を、ニワトリの幼鳥に捕獲するよう覚えさせた。すると、幼鳥が獲物を見つけるまでの時間は、小枝が密集している方が長くかかり、一方で、エダシャク幼虫の方も小枝がより多く付いている枝に好んで居着いた。昼間だと、幼虫は餌になる葉の入手可能性よりも小枝の密度の方を優先したが、捕食者が獲物を探し回らない夜間になると、食べられる葉がたくさんある枝の方に多く見られた。
小枝になりすましたエダシャク幼虫が高密度の小枝の間にいると、捕食者であるニワトリ幼鳥のやる気がくじかれて、幼虫の身はさらに守られることになる。小枝が多くて幼虫のいない枝環境を何度も経験した幼鳥は、獲物を探す意欲が低下するのだ。
翻訳:船田晶子
Nature ダイジェスト Vol. 8 No. 7
DOI: 10.1038/ndigest.2011.110730