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最古の銀河は独りぼっち?

Nature ダイジェスト Vol. 8 No. 4 | doi : 10.1038/ndigest.2011.110403

原文:Nature (2011-01-26) | doi: 10.1038/news.2011.47 | Oldest galaxy is lone ranger

Adam Mann

これまでで最も遠い銀河が発見された。この銀河は単独で存在しており、初期宇宙の天体は予想よりも少ない可能性が出てきた。

最古の銀河の最新の候補は、ハッブル・ウルトラ・ディープ・フィールドという赤外線画像の中から見つかった。地球から132億光年のところにある。 | 拡大する

NASA, ESA, G. Illingworth (University of California, Santa Cruz), R. Bouwens (University of California, Santa Cruz and Leiden University), and the HUDF09 Team

ハッブル宇宙望遠鏡を使って、これまでに見つかった中で最も遠い(古い)天体とみられる銀河が発見された。地球から132億光年の所にあるこの銀河は単独で存在しており、初期宇宙の天体はこれまで考えられていたよりもずっと少なかったことを示唆している。

この銀河は、ハッブル・ウルトラ・ディープ・フィールド(ハッブル超深宇宙探査)の中で見つかった。ハッブル・ウルトラ・ディープ・フィールドは、ハッブル宇宙望遠鏡が赤外線を使って撮影した「ろ座」の一領域で、現在までに撮影された中で最も光が弱く、最も遠い天体群が映っている。Nature 2011年1月27日号に掲載された今回の論文の筆頭著者で、現在はライデン大学(オランダ)に所属するRychard Bouwensは、「今回の発見は、ハッブル宇宙望遠鏡の観測データを限界まで使って得られたものです」と話す1

Bouwensらは、この銀河までの距離を「赤方偏移」により決定した。宇宙は膨張していて天体はだんだん離れて行くため、遠い天体ほど古く、遠方の光源からやって来た光の波長は光のドップラー効果により長く引き伸ばされ、スペクトルの赤い方へずれて見える。そして、遠く離れるほど天体は速いスピードで後退するので、光の波長はより大きく引き伸ばされる。

Bouwensらは、光がスペクトルの可視域から外れ、赤外部へ入るほど赤方偏移した天体を探し、赤方偏移値が10の銀河を1つ発見した(これまで最も遠い銀河の赤方偏移値は8.56だった)。この原始の銀河はあまりに遠く、その光はハッブル宇宙望遠鏡が観測できる最長の赤外波長でのみ検出できる。

この銀河から、宇宙の初期の時代、ビッグバンから約4億8000万年後(約132億年前)のようすをうかがうことができる。「この年代はハッブル宇宙望遠鏡の観測限界ですが、いくつかの理論モデルでは、ハッブルの観測により、1個ではなく複数の銀河が見つかるはずだと考えられていました」とBouwensは話す。

この時代に銀河がほとんどないことは、ビッグバンから約6億5000万年後の時期とは対照的だ。Bouwensらはその時期の銀河を約60個見つけている。

今回の結果は、2億年(長い宇宙の歴史の中ではまばたきのようなわずかな時間)に満たない期間に、小さな銀河から大きな銀河が急速に形成され、星の形成速度が10倍に上昇したことを示している。論文の共著者で、カリフォルニア大学サンタクルーズ校(米国)の天文学者Garth Illingworthは、「つまり、この時期にとても劇的な変化が起こったことを示しています」と話す。

宇宙の再電離

ビッグバンから約4億8000万年後の銀河がまばらなことは新たな謎を呼んだ。この辺りの時期、宇宙の中性水素(水素原子)の多くは、紫外線によって陽子と電子に電離した。「宇宙の再電離」と呼ばれるプロセスだ。「中性水素は光の多くの波長を効率的に吸収します。もしも再電離が起こらなかったら、宇宙から現在の地球に届く光はずっと限られていたでしょう」とBouwensは話す。一方Illingworthは、「今回の発見が正しいならば、この時代の宇宙には、再電離を起こすために必要な紫外線を十分に作り出せるほどたくさんの星はなかったことになります」と指摘する。活動銀河核(銀河の中心にあり、電磁波スペクトルの一部あるいはすべての領域で明るく輝く小領域)など、ほかの紫外線源も紫外線を出していた可能性もある。しかしBouwensによれば、活動銀河核は超大質量ブラックホールがそのエネルギー源であり、おそらくこの時代にはまだ超体質量ブラックホールは生まれていなかったとみられるという。

食い違う結果

今回の研究には加わっていない、アリゾナ州立大学(米国テンピ)の天文学者Rogier Windhorstは、「これはすばらしい成果だと思います。今回の発見は、ハッブル宇宙望遠鏡の後継機であり、今後打ち上げられる予定のジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡で、天文学者たちが何を見つけることができるのかを啓示しています」と話す。

しかし、英国のエディンバラ大学(英国)の天文学者James Dunlopは、こう指摘する。「ハッブル宇宙望遠鏡では、今回のような大きな赤方偏移を持つ天体の候補が見つかっても、それをもっと短い波長のデータで確認することはできません。ですから、ほかの研究者たちはこの手法をとらなかったのです。この手法では、ハッブルの観測データから、本来引き出すことを想定していなかったに近い情報を得ています」。Dunlopは、Bouwensらが報告している今回の銀河の赤方偏移値について懐疑的で、「分析結果にノイズが影響しているかもしれません」と話す。

Bouwensらが考えるよりもたくさんの銀河がこの時代にあったとする研究結果もある。別の研究チームは、同じくハッブル宇宙望遠鏡で得られたデータを使って、今回と同程度の赤方偏移の距離に、銀河である可能性のある天体を数十個見つけている。この結果は、宇宙が生まれてから4億8000万~6億5000万年の銀河数の増加速度は、Bouwensらの結果が示す速度よりもゆっくりしていたことを示している2

また、まれなタイプの超新星爆発が原因とみられているガンマ線バーストという現象の発生頻度を使って、初期宇宙での星形成の速度を決定した研究もある。この分析結果も、この時期の銀河はもっとたくさんあったとする見方を支持している3。ガンマ線バーストを使った研究論文の共著者である、オハイオ州立大学(米国コロンバス)の天文学者John Beacomは、「Bouwensらはこの時期にあった天体をすべて見つけてはいないのだと思います」と話す。

Bouwensは、「こうした不一致を解決するには、ハッブル宇宙望遠鏡とジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡でのさらなる観測が必要です。それによりもっと多くのデータを得られるでしょう。我々も今回の結果が最終的なものだとは考えていません」と話している。

(翻訳:新庄直樹)

参考文献

  1. Bouwens, R. J. et al. Nature 469, 504-507 (2011).
  2. Yan, H.-J. et al. Res. Astron. Astrophys. 10, 867-904 (2010).
  3. Kistler, M. D. et al. Astrophys. J. 705, L104-L108 (2009).

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Nature ダイジェスト Online edition: ISSN 2424-0702 Print edition: ISSN 2189-7778

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