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人類は、三つ子のときから共同的

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人類には、誇るべき特徴が少なくとも2つある。ほかの大型類人猿よりも、共同的であることと、気前がいいことだ。Nature 8月18日号の328ページでは、Katharina Hamannらがこの2つの特徴の関係を調べている(K. Hamann et al. Nature 476, 328–331; 2011)。

人間が分かち合いの性向を示し始める年齢については、多くの研究がなされてきた。3~5歳児は、思いがけず手に入ったものは公平には分配せず、労せずして得たものをだいたい独り占めしようとする。しかし成長すると、そうした「たなぼた」は平等に分かち合うようになっていく。

Hamannらは、共同作業による成果物になった場合、幼児たちの振る舞いが変化するのかどうか知りたいと考えた。そこで研究チームは、2~3歳児のペアを対象として、一方の子どもがお目当てのもの(4つのおもちゃのうち3つ)を手にしやすい状況を作り、相棒とそれを分かち合うかどうか決められる場面を設定して、実験を行った。おもちゃを手にするまでの経過には3通りある。2人の共同作業による場合、どちらも労せずして自由に手に取れる場合、単独での作業による場合だ。

実験の結果、3歳児(2歳児ではダメだった)が選択権を持った場合、分かち合いの頻度は、並行的な作業(約25%)よりも共同作業(約75%)のほうが高かった。つまり、幼児は「労働の対価としての報酬」の感覚を獲得していなくても、資源は獲得の経緯に応じて分配するべきだということを理解していたのだ。

協力と公平性とのこうした関係は、人間に特有のものなのだろうか。ほかの霊長類がヒトほど協力に価値を見いださないとすれば、「どうやって自分のものにしたかによってモノを配分する」という考え方には興味を示さないはずだ。この仮説の検証に取り組んだHamannらは、有利な立場にあるチンパンジーが分かち合いを行う場合はあるものの、それは、餌が共同作業によって得られたのか、それともたまたま手に入ったのか、ということとは無関係であることを発見した。

こうしたチンパンジーの行動については、ヒトと違って食物の調達を共同作業に依存していないためだ、という説明が成り立つと思われる。言い換えれば、人間は、生存のために共同作業が重要であることを認識しているため、獲得済みの資源を共有することによって、将来の共同作業の仲間に入れてもらうための投資をしているのだ。幸運にも我々は、このことをごく幼いうちから身につけるらしい。

翻訳:小林盛方

Nature ダイジェスト Vol. 8 No. 11

DOI: 10.1038/ndigest.2011.111111

原文

When it's fair to share
  • Nature (2011-08-18) | DOI: 10.1038/476289a
  • Sadaf Shadan