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首長竜も子を産み、育てる

Nature ダイジェスト Vol. 8 No. 10 | doi : 10.1038/ndigest.2011.111002

原文:Nature (2012-08-11) | doi: 10.1038/news.2011.478 | Did reptile swimmer show mother love?

Zoë Corbyn

首長竜の母体の化石内に、1体の大きな赤ちゃんがいたことが判明した。

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S. Abramowicz, Dinosaur Institute, NHM提供

恐竜時代に生き、絶滅した海生爬虫類である首長竜は、胎生だったことが明らかになった。それだけでなく、現在のクジラやイルカと同じように子育てをしていた可能性も出てきた。

「首長竜については約200年も前から知られていますが、みごとな化石はあっても、妊娠した首長竜の化石はこれまで見つかっていませんでした」と、マーシャル大学(米国ウエストバージニア州ハンチントン)の古生物学者Robin O'Keefeは話す。O'Keefeは、ロサンゼルス郡立自然史博物館(米国カリフォルニア州)のLuis Chiappeとともに、約25年も博物館の地下に眠っていた7800万年前の首長竜の一種Polycotylus latippinusの化石を分析した。

その結果、体長が470 cmの母体内に、150 cmもある大きい胎児が1体見つかった。この胎児は、20個の椎骨、肩や腰、ひれ足の骨が見られることから、出生時の3分の2ほどまで成長していると考えられた。今回の発見は、首長竜が陸上で産んだ卵から孵化したのではなかったことを示す証拠となる。この成果は、Scienceに報告された1

これまでの研究で、魚竜やモササウルス類などのほかの絶滅した海生爬虫類は、胎生だったことがわかっている。これらの海生爬虫類は、1回に多数の小さい赤ちゃんを産んでいた。しかし、Polycotylusの化石では、母体内に大きな胎児が1体しか入っていなかった。現在のヒトやゾウ、クジラなど、胎内で赤ちゃんを大きく育て1回に少数しか産まない動物は、母親が子育てに多大な投資をしている。「もし、母体内で大きな赤ちゃんを1体しか育てず、その赤ちゃんにすべてを託そうとするなら、生後も大事に育て上げようとするのは至極当然のことです」とO'Keefeは言う。

首長竜も同じく子育てをしていた可能性が高いとO'Keefeは考えており、子どもを守るために群れをなし、現在の海生哺乳類に近い社会的生活を営んでいたのだろうという。首長竜の赤ちゃんは世話を必要としない状態で生まれてきたとする見方もあるが、O'Keefeによれば合理的ではないという。見つかった胎児の骨は融合しておらず、生まれたての赤ちゃんは身体的に独り立ちができなかったとみられるからだ。

一部の少数の現生爬虫類も、1回に少数の大きな赤ちゃんを産む。これらの爬虫類にも哺乳類に似た社会的行動が見られると、O'Keefeは指摘する。

地下室から展示室へ

先史時代の海生爬虫類の専門家であるスタンバーグ自然史博物館(米国カンザス州ヘイズ)のMichael Everhartは、この化石標本を「実にすばらしい」と評している。「長年抱いてきた疑問の1つが、解けたのですから」。

しかしEverhartは、首長竜の社会生活や繁殖生活がほかの絶滅海生爬虫類と大きく異なっていたと結論するには、時期尚早だとも考えている。「とりあえず、さらに数体の化石標本が欲しいですね」と彼は言う。

今回の首長竜化石は、1987年に米国カンザス州で民間の化石ハンターによって発見された。そしてロサンゼルス郡立自然史博物館へ寄贈され、眠っていた。「地下室に保管されていたこの化石については、前々から噂があったんですよ」とO'Keefeは話す。昨年、この化石の展示が決定し、その準備と展示に必要な予算が得られた。そして、最近になってようやく同博物館の新しい「恐竜館」で披露されたのである。

(翻訳:船田晶子、要約:編集部)

参考文献

  1. O'Keefe, F. R. & Chiappe, L. M. Science 333, 870-873 (2011).

キーワード

Nature ダイジェスト Online edition: ISSN 2424-0702 Print edition: ISSN 2189-7778

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