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2026年京都賞は宮坂力氏ら3人に

左から、宮坂力氏、ファルーク・アザム氏、ローリー・アンダーソン氏。 Credit: Wolfgang Tillmans

公益財団法人 稲盛財団(京都市)は2026年6月19日、第41回(2026)京都賞の受賞者を発表した。先端技術部門(エレクトロニクス)は、次世代太陽光発電技術「ペロブスカイト太陽電池」を創成した宮坂力(みやさか・つとむ)氏、基礎科学部門(生物科学:進化・行動・生態・環境)は、海洋生態系の炭素循環における「微生物ループ」の役割を解明したファルーク・アザム氏、思想・芸術部門(音楽)は、電子メディアを駆使した独自のマルチメディア表現を確立したローリー・アンダーソン氏に贈られる。

桐蔭横浜大学大学院工学研究科特任教授・早稲田大学特命教授の宮坂力氏は、金属ハロゲン化物ペロブスカイトを光吸収層に用いる太陽電池を世界に先駆けて提案し、溶液塗布プロセスによる高効率な光電変換の可能性を切り開いた。従来の結晶シリコン太陽電池が厚い基板と堅牢なモジュール構造を前提としてきたのに対し、ペロブスカイト太陽電池は高い光吸収係数と優れた電荷輸送特性を生かし、薄膜化、軽量化、柔軟化に適している。

この技術は、建物の壁面、曲面、移動体、携帯型電源など、従来の太陽電池では設置が難しかった場所を発電面へ変える可能性を示した。さらに、シリコン太陽電池と組み合わせるタンデム型では、シリコン単体の効率限界を超える高効率化も期待されている。一方で、長期動作安定性、鉛含有材料の環境負荷、封止技術などは社会実装に向けた重要課題であり、宮坂氏は鉛フリー材料の探索や耐久性向上にも取り組んできた。

カリフォルニア大学サンディエゴ校スクリプス海洋研究所(米国)の名誉教授のファルーク・アザム氏は、海洋微生物が地球規模の炭素循環を駆動する主体であることを明らかにした。古典的な海洋食物網では、溶存有機炭素は主要な食物連鎖から失われるものと見なされがちだった。アザム氏は、細菌が溶存有機物を取り込み、それを原生生物などが捕食することで、炭素と栄養塩が食物網へ再び戻る「微生物ループ」の概念を提示した。

この概念は、海洋生態学と生物地球化学の枠組みを大きく変えた。アザム氏は、沈降粒子に集積する微生物群集が局所的な「ホットスポット」として高い代謝活性を示し、有機物の分解、深層への炭素輸送効率、生物ポンプの働きに影響することを示した。また、細菌が珪藻のシリカ殻を溶解する過程を通じて、炭素循環とケイ素循環の結び付きにも光を当てた。微生物スケールの相互作用を地球規模の物質循環へ接続した点に、同氏の研究の決定的な意義がある。

ローリー・アンダーソン氏は、電子メディアを核に、音楽、美術、映像、語り、身体表現を横断する実験的でポップな表現を確立したマルチメディアアーティストである。1970年代にニューヨークで活動を本格化させ、楽曲「オー・スーパーマン」やパフォーマンス作品「ユナイテッド・ステイツ1–4」などで、声の変調、反復、映像、身体、装置を統合した舞台言語を築いた。

アンダーソン氏の作品は、テクノロジーを通じて、メディア、科学技術、ジェンダー、語りの構造を問い直す点に特徴がある。米国航空宇宙局(NASA)のアーティスト・イン・レジデンス、VR作品、弦楽四重奏との協働などを通じ、音楽とパフォーマンス・アートの境界を拡張し続けている。

京都賞は、京セラ株式会社の創業者である稲盛和夫(いなもり・かずお)氏が設立した稲盛財団により、1984年に創設された。「単なる発明・発見だけでなく、道を究めるために人一倍の努力をし、その業績が長く人類・社会に多大な貢献をもたらした点を審査し顕彰する」という理念に基づいている。

(編集部)

Nature ダイジェスト Vol. 23 No. 8

DOI: 10.1038/ndigest.2026.260851