可視光で「永遠の化学物質」を分解する光触媒
燃料火災や大規模火災ではPFASを含む泡消火剤が広く使われてきた。近年の世界的な規制に伴い、他の製品と同様に代替品への置き換えが進んでいるが、環境中には既に大量のPFASが存在し、その回収・処理が必要とされている。 Credit: JanaShea/iStock Editorial/Getty
自然環境で容易に分解されない有機化合物群によって、地球が汚染されている。「永遠の化学物質」と呼ばれるこれらの化合物は、炭素(C)骨格と結合したフッ素(F)原子を多数持ち、この炭素–フッ素(C–F)結合が、洗剤や調理器具をはじめ、多くの医療機器や電子デバイス、産業用装置に有用な特性をもたらしている。しかし、そうした物質の多くは非常に毒性が強い。このたび、中国科学技術大学(USTC、安徽省合肥市)のHao Zhangら1は、可視光照射下でさまざまな「永遠の化学物質」をフッ素フリーの生成物とフッ化カリウム(KF、歯磨き剤に含まれる一般的な添加物)へと分解できる触媒を見いだし、Nature 2024年11月21日号610ページで報告した。今回の研究成果は、これらの化学的に不活性な化合物を処分する低エネルギープロセスの開発に向けて道を開くものである。
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翻訳:藤野正美
Nature ダイジェスト Vol. 22 No. 2
DOI: 10.1038/ndigest.2025.250241
原文
Catalysts degrade forever chemicals with visible light- Nature (2024-11-20) | DOI: 10.1038/d41586-024-03550-8
- Jinyong Liu
- カリフォルニア大学リバーサイド校(米国)に所属
参考文献
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