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組織治癒におけるミトコンドリアの意外な役割
ミトコンドリアは、20世紀には、主に、炭水化物や脂肪、タンパク質の分解により、エネルギーを持つATP分子を作り出すことで知られていた。また、産生した代謝物分子により、高分子の組み立てや細胞の増殖に必要な生合成経路を駆動することも知られていた。しかし21世紀に入ると、ミトコンドリアは細胞の機能や運命の能動的な調節因子としての評価が高まってきた1。このほど、トリカルボン酸(TCA)回路の重要な段階に関与するミトコンドリア代謝物α-ケトグルタル酸(α-KG)が、細胞内での存在レベルによって、腸幹細胞に吸収あるいは分泌のどちらかに特殊化した細胞系譜への分化を指示できることが、スローン・ケタリング記念がんセンター(米国ニューヨーク)のAlmudena Chaves-PerezとScott E. Millmanら2によってin vivoで示され、Nature 2025年7月10日号468ページに報告された。
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翻訳:三谷祐貴子
Nature ダイジェスト Vol. 22 No. 10
DOI: 10.1038/ndigest.2025.251045
原文
Mitochondrial molecule has unexpected role in tissue healing- Nature (2025-07-10) | DOI: 10.1038/d41586-025-01583-1
- Ram P. Chakrabarty & Navdeep S. Chandel
-
共にノースウェスタン大学ファインバーグ医学系大学院(米国イリノイ州シカゴ)に所属
Chandelはチャン・ザッカーバーグ・バイオハブ(米国イリノイ州シカゴ)にも所属
参考文献
- Chakrabarty, R. P. & Chandel, N. S. Cell Stem Cell 28, 394–408 (2021).
- Chaves-Perez, A. et al. Nature 643, 468–477 (2025).
- Schell, J. C. et al. Nature Cell Biol. 19, 1027–1036 (2017).
- Flores, A. et al. Nature Cell Biol. 19, 1017–1026 (2017).
- Rodríguez-Colman, M. J. et al. Nature 543, 424–427 (2017).
- Carey, B. W., Finley, L. W. S., Cross, J. R., Allis, C. D. & Thompson, C. B. Nature 518, 413–416 (2015).
- Baksh, S. C. & Finley, L. W. S. Trends Cell Biol. 31, 24–36 (2021).
- Chowdhury, R. et al. EMBO Rep. 12, 463–469 (2011).
- Jensen, J. B. et al. Diabetes 65, 1724–1730 (2016).
- Buse, J. B. et al. Diabetes Care 39, 198–205 (2016).
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