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クォーク対の量子もつれを観測

2つの粒子が量子もつれの状態にあると、一方の粒子の量子力学的状態は、もう1つの粒子の状態と独立に記述することはできない。量子もつれは既に何度も観測されていて1–4、量子計算と量子暗号の発展において重要なものだ。欧州原子核共同研究機関(CERN、スイス・ジュネーブ近郊)の大型ハドロン衝突型加速器(LHC)で実験を行っている実験グループの1つ、ATLASコラボレーションは、トップクォークと、その反粒子である反トップクォークの間の量子もつれを検出し、Nature 2024年9月19日号542ページで報告した5。この観測は予想外の結果ではない。もしも、この対がもつれていないことが分かれば、大きな驚きだっただろう。しかし、これほどの高エネルギーで量子もつれを観測したことは、驚くべき成果だ。さらに、あらゆる原子核を構成する基本的な粒子である、クォーク対で検出された点で、一層驚くべき成果といえる。

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翻訳:新庄直樹

Nature ダイジェスト Vol. 21 No. 12

DOI: 10.1038/ndigest.2024.241246

原文

Quarks show that quantum entanglement holds at high energies
  • Nature (2024-09-18) | DOI: 10.1038/d41586-024-02801-y
  • Martin Hentschinski
  • アメリカス・プエブラ大学(メキシコ)に所属

参考文献

  1. Aspect, A., Dalibard, J. & Roger, G. Phys. Rev. Lett. 49, 1804 (1982).
  2. Bowen, W. P., Treps, N., Schnabel, R. & Lam, P. K. Phys. Rev. Lett. 89, 253601 (2002).
  3. Steffen, M. et al. Science 313, 1423–1425 (2006).
  4. Ockeloen-Korppi, C. F. et al. Nature 556, 478–482 (2018).
  5. The ATLAS Collaboration. Nature 633, 542–547 (2024).
  6. Klebanov, I. R., Kutasov, D. & Murugan, A. Nucl. Phys. B 796, 274–293 (2008).