ラオスで現生人類の移動地図の再考を促す人骨が出土
考古学者のチームが、ラオス北部のタムパリン洞窟(Tam Pà Ling、サルの洞窟の意味)で2片の骨を発見した。それらは、遅くとも6万8000年前に、早ければ8万6000年前には、ホモ・サピエンス(Homo sapiens)が東南アジアを歩き回っていたことを示唆している。2023年6月13日付でNature Communicationsに発表されたこの研究1は、現生人類がさらに南へと移動する際にこの地域を通った年代が、従来の想定以上に古かったことを示している。なお、オーストラリアに到達した時期は、早ければ6万5000年前、遅くとも5万~5万5000年前とされている(2021年12月号「ヒトがアラビアを通って繰り返し分散した証拠」参照)。タムパリン洞窟の発掘では、過去10年余りの間に、粘土層の間に挟まれた7片の骨が発見されている。この発掘調査に参加しているイリノイ大学アーバナ・シャンペーン校(米国)の人類学者Laura Shackelfordらは、海抜1170 mのパハン(Pa Hang)山の頂にあるこの洞窟まで、熱帯の蒸し暑さの中をいつも歩いて行くしかなかった。
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翻訳:小林盛方
Nature ダイジェスト Vol. 20 No. 9
DOI: 10.1038/ndigest.2023.230907
原文
Laos cave fossils prompt rethink of human migration map- Nature (2023-06-13) | DOI: 10.1038/d41586-023-01903-3
- Jude Coleman
- 註:ラオス北部の洞窟では、13万1000〜16万4000年前に死んだヒト族の歯が見つかっており、デニソワ人のものとみられることが2022年に報告されている(2022年8月号「デニソワ人とみられる歯の化石、東南アジアで初めて発見」参照)。
参考文献
- Freidline, S. E. et al. Nature Commun. https://www.nature.com/articles/s41467-023-38715-y (2023).
- Demeter, F. et al. Proc. Natl Acad. Sci. USA 109, 14375–14380 (2012).
- Shackelford, L. et al. Quat. Int. 466, 93–106 (2018).
- Demeter, F. et al. PLoS ONE 10, e0121193 (2015).
- Demeter, F. et al. Curr. Anthropol. 58, S527–S538 (2017).
- Clarkson, C. et al. Nature 547, 306–310 (2017).