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培養で起こる染色体異常を利用して、雄マウス細胞から卵を作製

マウス幹細胞は、培養しているうちに染色体を獲得あるいは喪失する傾向がある。この事象を利用して、雄のXY細胞をXX細胞に転換した後、この細胞を分化させて機能的な卵を作り出し、仔を出生させることができた。

多能性幹細胞が自己複製したり、体のあらゆる種類の細胞に分化したりする能力は、培養において疾患を研究したり、治療用の個別化された細胞を作り出したりするのに利用できる。しかし、in vitroで多能性幹細胞を増殖させることには危険も伴う。長期培養すると、異数性（染色体が重複したり、完全に失われたりする現象）などの異常が引き起こされ得るからである1。このほど九州大学の村上健太（むらかみ・けんた）ら2は、幹細胞のこの傾向を利用して、多能性細胞の一種であるマウス胚性幹細胞（mESC）を雄から雌に転換できることを、Nature 2023年3月30日号900ページで報告している。村上らは、性転換を行ったこの細胞を分化させることで卵を形成し、受精させて仔を出生させることができた。これは生殖生物学における画期的な成果である。

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翻訳：三谷祐貴子

Nature ダイジェスト Vol. 20 No. 6

DOI: 10.1038/ndigest.2023.230645

原文

Eggs from male stem cells using error-prone culture
  • Nature (2023-03-30) | DOI: 10.1038/d41586-023-00755-1
  • Jonathan Bayerl & Diana J. Laird
  • 共にカリフォルニア大学サンフランシスコ校（米国）に所属

参考文献

  1. Eggan, K. et al. Nature Biotechnol. 20, 455–459 (2002).
  2. Murakami, K. et al. Nature 615, 900–906 (2023).
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