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古代エジプトミイラのレシピ

古代エジプトのミイラ製作には、どんな材料が用いられ、どんな工程があったのだろうか。防腐処理作業場から見つかった文字ラベルが刻印された土器を分子レベルで分析することにより、その問いに対していくらかの答えが得られた。

古来、古代エジプトのミイラが人々の想像力をかき立ててきたことは、ミイラをテーマにした多くの書物や映画、展覧会が示している通りだ。しかし、ミイラの製作に用いられた方法や材料の詳細は、あまり知られていない。このほど、ルートビヒ・マクシミリアン大学ミュンヘンおよびエバーハルト・カール大学チュービンゲン（共にドイツ）のMaxime Rageotら1は、防腐処理作業場と玄室から発掘された土器35点の内容物と神官文字（ヒエラティック：ヒエログリフ、デモティックと共に古代エジプトで用いられた、筆記体の象形文字）の刻印に関して化学的分析、考古学的分析、および文献学的分析を行い、その結果をNature 2023年2月9日号の287ページで発表した。土器が出土したサッカラの墳墓（図1）はエジプト有数の埋葬地で、遅くとも紀元前2900年には使われ始めた。発掘物は紀元前664～同525年ごろのもので、今回の分析により、ミイラ製作の複雑な技術と遺体保存に使われた物質に関する我々の理解が大いに深まるとともに、ミイラ製作の慣習の社会経済的な意味が明らかになってきた。

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翻訳：小林盛方

Nature ダイジェスト Vol. 20 No. 5

DOI: 10.1038/ndigest.2023.230543

原文

Recipes and ingredients for ancient Egyptian mummification
  • Nature (2023-02-09) | DOI: 10.1038/d41586-023-00094-1
  • Salima Ikram
  • カイロ・アメリカン大学（エジプト）に所属

参考文献

  1. Rageot, M. et al. Nature 614, 287–293 (2023).
  2. Ikram, S. Death and Burial in Ancient Egypt (Am. Univ. Cairo Press, 2015).
  3. Schiødt, S. Papyrus Ægyptol. Tidsskr. 36, 18–25 (2016).
  4. Buckley, S. A., Clark, K. A. & Evershed, R. P. Nature 431, 294–299 (2004).
  5. Clark, K. A., Ikram, S. & Evershed, R. P. Proc. Natl Acad. Sci. USA 110, 20392–20395 (2013).
  6. Jones, J. et al. J. Archaeol. Sci. 100, 191–200 (2018).
  7. Brier, B. & Wade, R. S. Z. Ägypt. Sprache Altertumsk. 124, 89–100 (1997).
  8. Ikram, S. in Divine Creatures: Animal Mummies in Ancient Egypt Ch. 2, 16–43 (Am. Univ. Cairo Press, 2005).
  9. Ikram, S. in Egyptology in the Present: Experiential and Experimental Methods in Archaeology (ed. Graves-Brown, C.) Ch. 4, 53–74 (Classical Press Wales, 2015).
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  11. Bareš, L. & Smoláriková, K. Abusir XXV, The Shaft Tomb of Menekhibnekau Vol. 1 (Czech Inst. Egyptol., 2011).
  12. Dutoit, C. E., Binet, L., Fujii, H., Lattuati-Derieux, A. & Gourier, D. Anal. Chem. 92, 15445–15453 (2020).
  13. Fulcher, K., Serpico, M., Taylor, J. H. & Stacey, R. Proc. Natl Acad. Sci. USA 118, e2100885118 (2021).