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ひねりを加えて固体中の電子を探る

2018年、炭素の単一原子層であるグラフェンのシート2枚を「魔法角」と呼ばれる特定の角度だけ回転させて重ねると、抵抗なく電気が流れるようになる、という驚くべき現象が観測された1(2018年6月号「グラフェンをずらして重ねると超伝導体に!」参照)。すぐに、この興味深い「ねじれ(ツイスト)2層グラフェン」の特性を明らかにしようとさまざまな試みが始まったが、そうした研究は困難なことが判明する2。ツイスト2層グラフェンを作るプロセスは、2枚の紙をずらして重ねるように簡単だと考えたくなるが、実際は非常に複雑だ。この積層構造は、角度をつけて回転させた状態よりも2層が完全に整合した状態の方が安定であるため、角度の調節が難しいのである。今回ワイツマン科学研究所(イスラエル・レホボト)のAlon Inbarら3は、二次元(2D)シート間の角度配置をin situで微調節できる素晴らしい実験技術を開発し、Nature 2023年2月23日号682ページで報告した。この技術は、おそらく我々が理想とする、2枚の紙をずらして重ねるのと同等のシナリオに最も近いものと言える。

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翻訳:藤野正美

Nature ダイジェスト Vol. 20 No. 5

DOI: 10.1038/ndigest.2023.230538

原文

A twist in the bid to probe electrons in solids
  • Nature (2023-02-23) | DOI: 10.1038/d41586-023-00474-7
  • Rebeca Ribeiro-Palau
  • ナノサイエンス・ナノテクノロジーセンター(フランス)に所属

参考文献

  1. Cao, Y. et al. Nature 556, 43–50 (2018).
  2. Uri, A. et al. Nature 581, 47–52 (2020).
  3. Inbar, A. et al. Nature 614, 682–687 (2023).
  4. Koren, E. et al. Nature Nanotechnol. 11, 752–757 (2016).
  5. Chari, T., Ribeiro-Palau, R., Dean, C. R. & Shepard, K. Nano Lett. 16, 4477–4482 (2016).
  6. Yankowitz, M. et al. Science 363, 1059–1064 (2019).