老化細胞は一生を通して体を傷つける
老化は避けられないものであると長い間考えられていたが、未然に防ぐ治療が実現可能であるとする証拠が増えてきている。こうした治療で特に注目されているのは、加齢に伴って蓄積する「老化」細胞、つまり細胞分裂を停止して、一見すると休眠状態にある、成長が止まった状態の細胞である1。しかし、老化細胞の単離は困難であることが分かっており、老化細胞の挙動を生物の一生を通して完全に理解するに当たり障害になっている。このほどポンペウファブラ大学(スペイン・バルセロナ)のVictoria Moiseevaら2は、マウスから老化細胞を単離する手法を確立し、Nature 2023年1月5日号169ページで報告している。Moiseevaらは、老化細胞を単離してから解析を行うことで、老化細胞が炎症を引き起こすこと、また、若齢マウスにおいてさえも骨格筋の再生を阻害することを明らかにした(若齢の個体においては、老化細胞は個体の役に立っていると、これまで考えられていた)。この研究は、老化細胞の除去が加齢との闘いに役立つ可能性があるという考えに説得力を持たせるものだ。
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翻訳:三谷祐貴子
Nature ダイジェスト Vol. 20 No. 4
DOI: 10.1038/ndigest.2023.230446
原文
Senescent cells damage the body throughout life- Nature (2023-01-05) | DOI: 10.1038/d41586-022-04430-9
- David J. Glass
- リジェネロン・ファーマシューティカルズ (米国ニューヨーク州タリータウン)に所属
参考文献
- Peacocke, M. & Campisi, J. J. Cell. Biochem. 45, 147–155 (1991).
- Moiseeva, V. et al. Nature 613, 169–178 (2023).
- Wiley, C. D. & Campisi, J. Nature Metab. 3, 1290–1301 (2021).
- Roubenoff, R. & Hughes, V. A. J. Gerontol. A. Biol. Sci. Med. Sci. 55, M716–M724 (2000).
- Theret, M., Rossi, F. M. V. & Contreras, O. Front. Physiol. 12, 673404 (2021).
- Shavlakadze, T. et al. Cell Rep. 28, 3263–3273 (2019).