Editorial

研究に性差分析を強く求めます

Nature ダイジェスト Vol. 19 No. 8 | doi : 10.1038/ndigest.2022.220805

原文:Nature (2022-05-18) | doi: 10.1038/d41586-022-01218-9 | Nature journals raise the bar on sex and gender reporting in research

Nature および一部のNature 関連誌への投稿論文では、研究デザインにおいて性別やジェンダーをどのように考慮したか、詳しく報告いただくことになりました。

多くの調査研究は、生物学的性別やジェンダーを考慮していない。 | 拡大する

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2020年11月25日、欧州委員会は、2021年から実施する研究助成プログラムの助成金受領者に対して、研究デザインに性差分析を組み込むことを義務付けると発表しました。具体的には、細胞を調べる際にデータを性別ごとに細分類することや、特定の技術がジェンダーの固定観念を永続させる恐れがないかどうかを検討することなどが含まれると考えられます。当時のNature の社説(Nature 2020年12月10日号 196ページ)では、この発表を重要な一歩と捉え、他の研究助成機関に追随するよう呼びかけ、出版社も性差分析を奨励する役割を担っていると表明しました。

過去10年間で性差分析を行った研究論文の数は大幅に増加しましたが、行っていない論文は依然として多く、特に、性別やジェンダーごとに細分類されたデータの報告は不十分です1-3

そこで、Nature や一部のNature 関連誌への投稿論文には、研究デザインにおいて性別やジェンダーを考慮したか、どう考慮したか、しなかった場合はその理由について、明記いただくことにしました。また、研究知見が一方の性別やジェンダーだけに当てはまる場合は、その旨を論文のタイトルか抄録、もしくは両方に記載いただきます。

性別やジェンダーごとに細分類されたデータを収集した場合、個人レベルのデータを論文で報告・共有することへのインフォームド・コンセント(説明と合意)を得ている場合には、論文投稿者には細分化されたデータの開示も要請します。以上の変更点は、ヒトを対象とした臨床試験などの研究や、ヒト以外の脊椎動物に関する研究または細胞株に関する研究で、性別やジェンダーを考慮することが適切な場合に適用されます。

研究デザインの透明性が向上し、究極的には研究知見がより正確になることを弊社は目指しています

それと同時に、性別やジェンダーに関する研究知見を伝える際に、特にその知見が社会や公共政策に影響を及ぼし得る場合は、偶発的に有害な影響が及ばないよう、論文著者に配慮と慎重さを求めます(詳細はgo.nature.com/3mcu0zj)。これらはSAGER(Sex and Gender Equity in Research)ガイドラインの一部となっています4

6月1日からは4つのNature 関連誌(Nature CancerNature CommunicationsNature MedicineNature Metabolism)が、査読過程で著者と査読者に対して、今回の勧告の周知を図っています。これらの学術誌の論文で、性別やジェンダーの報告が既にどの程度、研究デザインやデータ収集・分析に組み込まれているかを知っていただくためです。また、これらの学術誌では、著者や査読者がこの変更点をどう受け止めたかを評価し、今後の経験から学びを得ながら、今回の変更を他誌でも実施できるようにします。

新しい措置が必要なのは、性別やジェンダーを考慮しない研究がまだ大半を占め、時には破滅的な結果をもたらすからです。米国では、1997〜2001年に10点の処方薬が使用中止となりました。そのうちの8点は、男性よりも女性に重い副作用が出ると報告されています(この分類に該当しない人々が存在することは承知しています)。差異が見過ごされた原因の1つはおそらく、臨床試験での性差分析が不十分あるいは不適切だったことにあります。

この変更により、研究デザインの透明性が向上し、究極的には研究知見がより正確になることを弊社は目指しています。性差分析を研究デザインに組み込むことが当たり前になってほしいのです。

(翻訳:菊川要)

参考文献

  1. Woitowich, N. C., Beery, A. & Woodruff, T. eLife 9, e56344 (2020).
  2. Rechlin, R. K., Splinter, T. F. L., Hodges, T. E., Albert, A. Y. & Galea, L. A. M. Nature Commun. 13, 2137 (2021).
  3. Brady, E., Wullum Nielsen, M., Andersen, J. P. & Oertelt-Prigione, S. Nature Commun. 12, 4015 (2021).
  4. Heidari, S. et al. Res. Integr. Peer Rev. 1, 2 (2016).

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Nature ダイジェスト Online edition: ISSN 2424-0702 Print edition: ISSN 2189-7778

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