News & Views

プラスチックのリサイクルに最適な酵素

図1 インドネシアのスラバヤにて、山積みにされる使用済みプラスチックボトル。現在、PET廃棄物から高品質の再生PETを得るリサイクルは、ボトルなど特定の製品に限られている。Luら1は今回、原料となるPET廃棄物の選択肢を広げることのできる酵素を開発した。 Credit: JUNI KRISWANTO/AFP/GETTY

プラスチックは、包装や消費財に極めて有用だが、廃棄物の管理が不十分なために土壌や海洋が汚染されている。この問題は、原理上はリサイクルによって回避できる(図1)。しかし、プラスチック製品の多くは溶融・再加工による「メカニカルリサイクル(物理的再生法)」向けに設計されておらず、再生により品質が低下してしまう。一方、ポリエチレンテレフタレート(PET)などの特定のポリマーを主原料とする製品は、ポリマー鎖を化学的分解(解重合)による「ケミカルリサイクル(化学的再生法)」で分子構成要素(モノマー)に戻すことができ、モノマーを精製・再重合すれば「クローズドループ・リサイクル」を達成できる。だが、これには通常、多くのエネルギーと大量の塩基や酸が必要で、経済的にも生態学的にも妥当ではない。これらの課題を解決し得る方法に、酵素による解重合があるが、工業スケールの反応に適した活性を持つ酵素が存在せず、この戦略は開発が進んでいなかった。このたび、テキサス大学オースティン校(米国)のHongyuan Luら1は、機械学習を利用して、メカニカルリサイクルに適さない一般的なPET系製品を完全に分解することのできる酵素を開発し、Nature 2022年4月28日号662ページで報告した。この成果は、PETリサイクルの現状を一変させる可能性がある。

全文を読むには購読する必要があります。既に購読されている方は下記よりログインしてください。

翻訳:藤野正美

Nature ダイジェスト Vol. 19 No. 7

DOI: 10.1038/ndigest.2022.220742

原文

Tailor-made enzymes poised to propel plastic recycling into a new era
  • Nature (2022-04-28) | DOI: 10.1038/d41586-022-01075-6
  • Eggo U. Thoden van Velzen & Giusy Santomasi
  • Eggo U. Thoden van VelzenとGiusy Santomasiは、共にワーへニンゲン大学研究センター(オランダ)に所属。

参考文献

  1. Lu, H. et al. Nature 604, 662–667 (2022).
  2. PETCORE Europe. https://www.petcore-europe.org/newsevents/409-pet-market-in-europe-state-of-play-2022.html (2022).
  3. Yoshida, S. et al. Science 252, 1196–1199 (2016).