Where I Work

Geoff Gurr

Credit: Nature by MATTHEW ABBOTT

写真はアンギュロン(オーストラリア・ニューサウスウェールズ州)のブドウ園で撮影しました。私はここで、いくつかの野外実験を行っています。ブドウ園での持続可能な農業について研究しているのです。猛毒を持つブラウンスネークに警戒する必要がありますが、こんな風光明媚な所でブドウの木に囲まれて働けるのですから、とても良い仕事だと思っています。

撮影を行ったのは11月の夕方です。南半球では春です。リンゴウスチャイロハマキ(Epiphyas postvittana)というガをはじめ、各種の害虫が出てくる時期なので、私たち生態学者はワイン生産者と協力して、昆虫の発生を追跡するためのデータ収集に取りかかります。このガは1年間に数世代発生するため、ブドウの収穫期にはかなりの数になり、ブドウの実に入り込んで大きな被害を及ぼすことがあります。

私たちの実験は、ブドウの木の間や下にさまざまな種類の植物を植えることで、害虫の捕食者を増やし、害虫による被害を抑えようとするものです。例えば寄生バチは、リンゴウスチャイロハマキの卵に自分の卵を産み付けます。ガの幼虫の体内で孵化した寄生バチの幼虫は、内側からこれを食べて外に出ます。ぞっとしますね。けれども寄生バチのこの生態を利用することで、環境に優しい方法でガの個体数を抑制することができるのです。

チャールズ・スタート大学オレンジキャンパス(オーストラリア・ニューサウスウェールズ州)にある私の研究室では、ガの卵を孵化させて特殊なカードの上に載せ、それをブドウ園に置いています。寄生バチは花蜜を好むので、花の咲く低木を植えた区画に置いたカード上の卵は、草が優勢な対照区画に置いたものよりも多く寄生されると予想されます。私たちはカードを置いてから約48時間後に回収し、卵を孵化させて、どのくらい寄生されていたかを測定します。2〜3年後にはデータがもっと蓄積し、農薬を使わずに害虫を抑制するのに最適な植物の組み合わせが明らかになると思います。

翻訳:三枝小夜子

Nature ダイジェスト Vol. 19 No. 6

DOI: 10.1038/ndigest.2022.220652

原文

Grape expectations: making Australian wine more sustainable
  • Nature (2022-01-31) | DOI: 10.1038/d41586-022-00218-z
  • Benjamin Plackett