Where I Work

Tammy Hsu

Credit: Nature by HELYNN OSPINA

私が研究において重視しているのは、「クリーン」な色を作ることです。従来の布用染料の多くは、持続不可能なプロセスで作られています。例えば合成インジゴは、通常、石油由来のアニリンから、ホルムアルデヒドやシアン化物を用いた高温プロセスによって作られています。世界的に見ると、産業排水汚染の約20%が布地の染色によるものです。

私は、従来の染料の代わりになる、微生物発酵を利用した染料を作ることに挑戦しています。私が共同設立したばかりのスタートアップ企業ヒュー社(Huue;米国カリフォルニア州バークレー)は、染料分子が自然界でどのように作られているかに注目しています。私たちは天然インジゴを産生する植物の生化学的経路を研究し、大腸菌(Escherichia coli)に同じ方法で染料を作るようプログラムしています。有毒な化学物質を使う代わりに、微生物に餌を与えて染料を作らせるのです。

私たちがインジゴを選んだのは、誰もがよく知る染料だからです。インジゴがデニムの綿糸に結合し、繊維の外側から染まっていく様子は格別です。着用しているうちに繊維の外側のインジゴが落ち、白い芯が見えてくるのが、デニムの色落ちの正体です。

私は、カリフォルニア大学バークレー校でインジゴの生化学的経路を微生物に組み込む研究をしていました。私の研究に複数のデニムブランドが興味を示してくれたので、卒業直前にビジネスパートナーのMichelle Zhuと共同でヒュー社を設立しました。そして、スタートアップ・アクセラレーターの支援を受けてシード資金を調達し、本格的に事業を始めました。

この写真は、ヒュー社の研究室に引っ越した直後に撮影したものです。私の奥に見えているのは発酵ステーションです。黒っぽい液体が入ったタンクで、微生物を育てています。これらの装置を使って微生物の生育条件を微調整し、微生物が染料を最も多く産生する条件を探す実験をしています。

私たちの方法で高品質の製品を作れることは実証できたので、今は、染色工場と協力して、どのような品質の生地ができるかを調べています。デニムブランドの発売スケジュールにもよりますが、当社のインジゴで染めた商品を1年以内に市場に出したいと思っています。

Nature ダイジェスト Vol. 19 No. 4

DOI: 10.1038/ndigest.2022.220452

原文

The greener route to indigo blue
  • Nature (2021-11-15) | DOI: 10.1038/d41586-021-03437-y
  • JAMES MITCHELL CROW