Where I Work

Carla Daniel

Credit: Nature by MICHAH B. RUBIN

この写真を撮ったのは、ウミガメの産卵シーズンの6月の夜でした。ニーダムズ・ポイントの浜辺で、絶滅寸前種のタイマイ(Eretmochelys imbricata)の雌を計測しているところです。私はバルバドス・ウミガメプロジェクトの現場責任者として日々保護活動にいそしむ傍ら、ボランティアの育成と管理も行っています。

私たちは保護活動に役立つ調査プロジェクトも実施していて、甲羅の長さなどのデータを収集しています。甲羅の長さからは雌が性的に成熟する年齢を知ることができ、成長の速さも分かります。こうしたデータは、カメの健康状態や生存率を追跡するのに役立ちます。例えば、これまでよりも体の小さいカメが多くなってきたら、成熟が速くなっているか、餌不足で成長が遅くなっている可能性があります。

8月には子ガメが孵化します。私は緊急事態に備えて、毎日8時間程度待機していました。孵化した子ガメが進むべき方向を間違えて、車に轢かれたり、ネズミやネコなどに捕食されたりする恐れがあるからです。私たちはこうした子ガメを浜辺の安全な場所に連れていって放します。ハリケーン「アイダ」の接近に伴ううねりにも備える必要がありました。台風による高潮で卵が海に流されてしまうことがあるからです。私たちは救助した卵や未熟な子ガメを仮設の集中治療室に運び、海に放せる状態になるまで保護しました。孵化した子ガメが1匹残らず海に行けるようにしたいのです。

私がこのプロジェクトに従事するようになって15年になります。最近、ウミガメプロジェクトの拠点である西インド諸島大学(バルバドス・ケイブヒル)で、クロアカウソ属のバルバドスブルフィンチ(Loxigilla barbadensis)という鳥の体色についての研究を行い、修士課程を修了しました。博士課程に進み、バルバドスにおける観光業とウミガメの共存方法などについて研究したいと思っています。バルバドスのウミガメは生涯のあらゆる段階で人間と相互作用していて、それが彼らの生存に影響を及ぼす可能性があるからです。博士号を取得した後も、カリブ海に生息するウミガメの保護に尽力したいと考えています。ウミガメの一生にリアルタイムで明確な変化を起こせる保護活動は、一度やったらやめられない、強い魅力があるのです。

翻訳:三枝小夜子

Nature ダイジェスト Vol. 19 No. 3

DOI: 10.1038/ndigest.2022.220348

原文

Saving hawksbill sea turtles from rats, cats and Hurricane Ida
  • Nature (2021-10-18) | DOI: 10.1038/d41586-021-02851-6
  • Natasha Gilbert