Editorial

ガラスはカーボンニュートラルな未来にとっての隠れた宝石だ

Nature ダイジェスト Vol. 19 No. 2 | doi : 10.1038/ndigest.2022.220249

原文:Nature (2021-11-03) | doi: 10.1038/d41586-021-02992-8 | Glass is the hidden gem in a carbon-neutral future

ガラスは、リサイクルしても劣化しないし、カーボンフリーのガラスも製造可能だ。それなのに、なぜ各国でガラスが地中に埋められてしまうのだろうか?

2020年にベイルート(レバノン)で起きた爆発事故で粉々になったガラスを、リサイクルするために選別する人々。 | 拡大する

JOSEPH EID/AFP/GETTY

ガラスは、その特性を失わずに、無限にリサイクルできる。それなのに、欧州諸国を除く大部分の国々が、いまだにガラスの大半をトン単位で埋め立て処分しているのはなぜだろうか。米国環境保護庁(EPA)によると、米国だけで2018年に約700万tのガラスが埋め立て処分場に運び込まれ、それが一般固形廃棄物全体の5.2%を占めている。

プラスチックの使用量を削減しようという動きが、特に液体を入れる容器のための新素材探しを加速させている。しかし、ガラスという既存の素材が、ネットゼロカーボン経済の主役になり得るのだ。

ガラスの製造により、世界中で少なくとも年間8600万tの二酸化炭素(CO2)が発生している。しかし、そのほとんどは、ガラスをリサイクルすることで解消できる。また、既存の技術を使って、ガラス製造工程を超低炭素にできる可能性もある。今必要なのは、各国がガラスの埋め立て処分をやめ、ガラスのリサイクルを義務化することだ。

ガラスは、石灰石と砂とソーダ灰を混ぜて1500℃に加熱して作られる。加熱工程は、天然ガスを熱源とし、ガラス製造時のCO2排出量の75〜85%を占めている。残りの排出量は、原材料の化学反応によって生じる副産物による。ただし、これらの原材料の一部は、粉砕された再生ガラス(カレット)で代替ができる。カレットを溶かしてもCO2は排出されない。また、ガラスを溶かすための炉は、原材料を溶かす場合ほど激しく燃やす必要がないため、さらにCO2排出量を削減できる。ブリュッセルに本部を置く業界団体、欧州ガラスびん連合(The European Container Glass Federation;FEVE)によると、炉に入れるカレットを10%増やすと、原材料だけでガラスを作る場合と比べてCO2排出量が5%減少するとされる。

ただし、他のリサイクル方法と同様、いくつかの注意点がある。窓ガラスに使われる板ガラスは、他の多くの用途に使われるガラスと異なり、不純物を含むことが許されない。そのため、ジャムの瓶を溶かして窓ガラスを作ることはできない。しかし、板ガラスのカレットは、さらに板ガラスを作るために使用できる。

また、いくつかの問題については、さらなる研究が必要になる。例えば、政府が適切な資源を配分するためには、ガラスの回収とリサイクルのシステムを強化した場合の金銭的コストを知っておく必要がある。さらに、ガラスはプラスチックよりも重いため、ガラスを代替品として使用すると、輸送コストや排出量が増える可能性が非常に高く、その点も理解する必要がある。

ガラスのリサイクルに関して、欧州は世界で最も進んだ地域で、他の地域に水をあけており、さらなる高みを目指している。研究者は、欧州のリサイクル制度がどのようにして生まれたのか、その長所と短所、他の国にとっての教訓があるかどうかを調べることができる。EU加盟国(27カ国)と英国では、ボトルなどの容器に用いられるガラスの4分の3がリサイクルのために回収されている。その結果、EU内で製造される新しいガラスには、既に約52%のリサイクル材料が含まれている。ガラス容器業界は、2030年までにEUで廃棄される容器ガラスの90%を回収するという目標を掲げている。

しかし、それ以外の国々は、必要とされるレベルに達していない。また、ほとんどの国々が自国の活動を報告していないこともあって、ガラスのリサイクルに関するデータを見つけるのは困難だ。また、ガラスのリサイクルに関するデータを収集している国際機関もないようだ。これは変える必要がある。

とはいえ、回収率とリサイクル率を上昇させるための各国の取り組みは進んでいる。米国では、ガラス容器のリサイクル率は平均31%にすぎないが、米国バージニア州アーリントンに本部を置く業界団体であるGlass Packaging Instituteは、2030年までに50%に引き上げることを目指している(そのためには、ガラスくず全体の56%を回収しなければならない)。同様に、ヨハネスブルク(南アフリカ共和国)に本部があるGlass Recycling Companyが実施しているプロジェクトでは、リターナブルびん(回収後に洗浄して繰り返し使用するびん)の利用促進などによって、南アフリカ共和国全体のリサイクル率を2005~06年の18%から2018~19年には42%まで高めた。しかし、その他の国々(例えば、ブラジル、中国、インド)では、当局が沈黙しており、計画や意欲すらも明らかにしていない。

廃棄物を削減する法律とガラスの埋め立て処分を最終的に禁止する法律を備えた国を増やす必要がある。そうすれば、ガラスをリサイクルする意欲が自然に高まる。欧州では、廃棄される建築・建設資材の70%をリサイクルすることが既に義務付けられている。残りの30%は、道路材料やその他の基本的な建築工程で骨材として使用されているが、これは貴重な資源の莫大な浪費だ。

また、製造時に混合した化学物質を溶かすプロセスを脱炭素化することでも、CO2排出量を削減できる。FEVEが推進するFurnace for the Future(「未来の炉」の意味)という実証プロジェクトでは、エネルギー源を天然ガスから電気に置き換えたハイブリッド電気炉を用いて再生ガラスのカレットを加熱し、ガラスを製造している。この電力源を完全に脱炭素化することができれば、ガラスの製造工程全体で実質的にカーボンフリーが実現すると考えられる。

ガラスは必要不可欠な素材だ。それに、ガラスの製造工程のカーボンフリー化は、比較的短期間で実現可能である。しかし、ガラスを適切に回収してリサイクルするための法律と、埋め立て処理されないようにするための法律が必要だ。地域社会や企業によるガラスの回収とリサイクルのためのインフラ作りを支援する必要もある。解決策はもう出揃っており、比較的単純な解決策だ。その実行が必要なのだ。実行されれば、ガラスのグラスで祝杯を挙げることができるだろう。

(翻訳:菊川要)

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Nature ダイジェスト Online edition: ISSN 2424-0702 Print edition: ISSN 2189-7778

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