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イノシン分子が体重減少を焚きつける

褐色脂肪細胞
褐色脂肪細胞は、主に鎖骨や胸の辺りに分布している細胞。多房性脂肪滴を多く持ち、ミトコンドリアに富んでおり、脂肪や糖を分解して熱を産生して、寒冷環境での体温維持に関わっている。近年、脂肪燃焼の機能から、肥満抑制の標的となっている。 Credit: Jose Luis Calvo Martin & Jose Enrique Garcia-Mauriño Muzquiz/Collection:istock/Getty

欧州では、成人のほぼ60%と子どもの約3分の1が、過体重あるいは肥満である(go.nature.com/3bsIjrd参照)。肥満を軽減する効果的な治療法は、生活習慣改善の指導の他には、ほとんどが外科的処置を伴うため、侵襲性の低い新しい戦略が必要である。現在、体重を減少させる治療の標的として関心を持たれているのは、脂肪組織の一種である褐色脂肪組織(BAT)だ。BATでは、細胞小器官のミトコンドリアが獲得したエネルギーを熱に変換して放出することで、カロリーが消費される。この過程は熱産生と呼ばれている1,2。以前の研究からも、こうしたBATの活性は体重減少や代謝的な健康の改善に関連していることが示されている1。このほどボン大学病院(ドイツ)のBirte NiemannとSaskia Haufs-Brusbergら3は、BATの活性を支配する、これまで知られていなかった調節経路の概要を説明し、この経路が治療としての体重減少の標的になる可能性があることを、Nature 2022年9月8日号361ページで報告している。

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翻訳:三谷祐貴子

Nature ダイジェスト Vol. 19 No. 12

DOI: 10.1038/ndigest.2022.221243

原文

A ‘replace me’ signal from dying brown fat fires up weight loss
  • Nature (2022-09-08) | DOI: 10.1038/d41586-022-01826-5
  • Katrien De Bock & Christian Wolfrum
  • Katrien De Bock、Christian Wolfrumは共にチューリヒ工科大学(スイス)に所属。

参考文献

  1. Becher, T. et al. Nature Med. 27, 58–65 (2021).
  2. Sun, W., Modica, S., Dong, H. & Wolfrum, C. Nature Metab. 3, 751–761 (2021).
  3. Niemann, B. et al. Nature 609, 361–368 (2022).
  4. Schulz, T. J. et al. Nature 495, 379–383 (2013).
  5. Shi, Q. et al. Lancet 399, 259–269 (2022).
  6. Carpentier, A. C., Blondin, D. P., Haman, F. & Richard, D. Endocr. Rev. https://doi.org/10.1210/endrev/bnac015 (2022).
  7. Wolfrum, C. & Gerhart-Hines, Z. Science 375, 1229–1231 (2022).
  8. Pontzer, H. et al. Science 373, 808–812 (2021).
  9. Shabalina, I. G., Jacobsson, A., Cannon, B. & Nedergaard, J. J. Biol. Chem. 279, 38236–38248 (2004).
  10. Allard, B., Allard, D., Buisseret, L. & Stagg, J. Nature Rev. Clin. Oncol. 17, 611–629 (2020).
  11. Boknik, P. et al. Front. Pharmacol. 11, 627838 (2021).